20211229

12/29-30 霞沢岳 西尾根 積雪期アルパイン 小林

山域
霞沢岳 西尾根
日程
2021年12月29~30日
メンバー
小林
コースタイム
12/29 9:30釜トンネル入り口、10:15太兵衛平、13:15 2070m幕営地
12/30 6:35 2070m幕営地、9:45 2920m地点、10:45 2070m幕営地、13:00太兵衛平、13:50釜トンネル入り口
詳細
 

山との付き合い方を見つめ直したくて、今年の年末は、合宿はパスさせてもらい、ひとりで山に入ることに。

12/28の夜行バスで松本へ。駅前のマックで時間をつぶし、始発の高山行き高速バスで中の湯まで。9:30に釜トンネルを出発する。上高地トンネルを出て、5分程度で国土交通省の看板のある太兵衛平に到着(10:15)。ここを右に曲がって数分で西尾根に上がるトレースが付いていた(赤リボンと電線が目印)。いきなりの急登で、フィックスロープが張ってある。

「ここを右に」

「ここから尾根に上がる」

尾根に上がってからの最初の急登、雪の下が凍っているので、早速アイゼンを装着。急登と緩やかな登りを繰り返すが、トレースがあるので助かる。途中、ソロの登山者が下山してきた。

「焼岳」

「穂高方面」

1900m付近にエスパースを発見。ダブルアックスなのか、アックスはたくさんあるが、テントのサイズとアイゼンの数から、おそらく3人組。さらに少し上がると2人組がテントを張って休んでいた。2000m付近がテント適地と聞いていたが、まだ時間が早いので、もう少し上がりたいところ。2450m付近でも張れるという情報もあるが、明日は天気が崩れそうで登れるかも分からないし、空荷で早めに出た方が楽だから、私もここら辺りで張ることにする。2人組テントの少し上にテント跡地を見つけたので、ここを利用しようかと思ったが、木が少なくて、吹きっさらし。既に雪もチラつき始めていて、風が強くなることが予想されるので、もう一段上がってみることにするが、それがなかなかの急斜面。ピッケルでなくストックだったので、ヒヤヒヤしながら木を掴んで、その斜面を登り切った。一人だと何かと不安ですね…。と、右側に古いテント跡地らしきものがあり、吹き溜まりの雪を掘り出せば、良い風よけになりそうだったので、ここを今宵の宿とする。

「今宵の宿」

テントを張って落ち着いたのが、まだ14時前。今回はお酒を持ってこなかったので、やることない。一人分の水もすぐ出来てしまったし、おにぎり1個しか食べてなくて腹も減ったので、早々に夕飯とする。メニューはお楽しみの鰻!軽いし、持ち運びやすいし、濃いタレがアルファ米特有の匂いも誤魔化してくれるし、何より豪華感があるので、軽量化したい時のメニューは最近こればかり♪。ちなみにふるさと納税で真空パックのものを注文しています。

「最近の定番の鰻♪」

ご飯も食べてしまえば、いよいよやることない。17時頃から、雪の降る音を聞きながら、ひと眠り。19時頃目が覚めて、さっき食べたばかりだけど、残ってたおにぎりで雑炊を作り、夜食とした。
12/30、4時のアラームで目が覚める。ひとりのテントは寒かろうと心配していたが、新しいナンガのシュラフが良いのか、そこまで寒くなかった(単に気温が低くなかったのだと思う。水も凍って無かった)。風の音がビュービューしているし、吹き溜まりに張ったこともあり、テントも雪で埋もれてきてる気がする。張り切って5時半には出ようかと思っていたが、すっかりテンション下がり、シュラフの中でしばしウダウダする。それでも、何とかシュラフから出て、ひとまず朝食を食べるが、一向に天気が良くなる気配はない。それもそのはず、どんどん悪くなる予報なので、正直、待っていても良くなるはずがない。でも、ここで帰るのもつまらんし、明るくなったら行けるところまで行ってみっかー、ということで、ひとまず二度寝を決める。温かい韓国ラーメンの朝食で腹も満たされ、フカフカの新しいナンガのシュラフに包まれれば、そこは天国。ラジオを聞きながらうつらうつらしていると、人の声がして、ライトの明かりが見えた。覗くと2人組が登っていった。それでも、まだシュラフから出たくなくて、むにゃむにゃしてると、もう一組登っていった模様。おそらく、下に張っていた2パーティだろう。私もこうしちゃいられんといよいよ決心し、シュラフから飛び出して、6:35に出発。と、昨日から坂巻温泉に入っている関東時代の師匠から電話。「どおー、そっちの天気は?こっちも悪いよー。」なんて呑気な声。行けるとこまで行って引き返すことを伝える。
出発時には、ヘッドライトはほぼ要らないくらいだった。おかげさまでトレースがあるが、30分ほどで3人組に追いついた。トップに立ってみると、全くトレースが無い。2パーティ登っていったと思ったけど、2人組と思ったのがさっきの3人組だったのか?ラッセルと言っても、昨日から降っている雪の下にはトレースがあるので、上手くそこを歩けば、そこまで沈まない。大体足首、深い所でも膝くらいで、荷物も無いので、順調に標高を上げる。稜線の風がそれほど強くなければ、ひょっとしたら登れるかも?と色気を出して、ますますスピードアップ。木が低くなってきて、記録で良く出てくる「ナイフリッジ」らしきものが出てくるが、大したリッジでは無い。

「ナイフリッジ?」

そこを超えると、いよいよ核心と言われる岩峰らきものがボワーッと見えてきた。特に下りでは懸垂している記録が多かったので、ロープを持ってこなかった私はどんなもんかと心配していたが、全く大したことない。バリエーションルートのアプローチ程度。フィックスロープも所々に見えるし、これなら問題無くクライムダウン出来ると判断し、早速登り始める。アックスもバッチリ決まって、久しぶりの感覚にテンション上がる。

「岩峰?」

ここを超えると、通称「ビクトリーロード」と言われる穂高を横目に頂上に達する緩やかな稜線。…のはずだが、視界などあるわけなく、その面影は全く無い。風も大分強く、立ち止まって耐えながら、風が弱まったら進む感じ。

「ビクトリーロード?」

と、先に2人組が登っているのが見えた。トレース無いと思ったが、風と雪で消されてただけだと気付く。さほど離れていないのに、あんなに消えるとは…。こうなったらサッサと登って帰りたいが、いよいよ視界が無くなり、まさにホワイトアウト。天と地の境目が全く分からなくなってきた。すると、前の2人組が引き返してきた。「そろそろ頂上ですよね…」と言いかけると、「視界が無いし、どこが頂上か分からないので引き返します」とのこと。「お気を付けて」と声を掛けられ、少し進むと、一瞬ガスが消えて、頂上らしきものが見えたが、すぐにまたガスに包まれ、しばらく待ったが、二度と見えることは無かった。ヤマップのGPSで2620m地点。頂上が2645mなので、ホントにもう少しなんだけれども、どこに向って歩けばいいのか全く分からない。そこまでして登る山でも無いので、私もここで撤退を決める。

「奥に頂上(のはず)」

が、ここからが大変だった。下から吹き上げてくる風で目が開けられない。ゴーグルを持ってこなかったことを悔やむ。前の2人組もガスで見えないし、どこを歩いているのか全く分からない。先程抜かした3人組と擦れ違った後、どうやら道を外している気がして、GPSを確認すると、少し下を歩いている程度でそこまで外していなかったが、なんと頂上側を向いている!?GPSの向きが狂ったんかと戸惑っていると、進行方向から3人組が下って来るではないか!やはり逆方向に歩こうとしていた!なんでこんな勘違いをしたのか、全く訳が分からないが、ともかく今は樹林帯まで早く下りたい。ゴーグル代わりのサングラスを取り出し、3人組が歩いているところまで登り返す。サングラスで雪粒は避けられるけど、視界は当然暗くなる…。3人組のトップの方に「前見えないですよね?先行きましょうか」と言って頂き、有難くお願いする…(情けない…)。そこからすぐで先程の岩峰に出て、2人組がロープの準備をしていた。「ロープ出さないので、先に行かせて下さい」と声を掛け、先にクライムダウンする。下り終わって振り返ると、さっきの二人も私が下るのを見てロープ不要と判断したのか、懸垂ではなくクライムダウンしていた。
樹林帯に入り、トレースは消えているが、尾根は明瞭だし、要所要所にリボンがあるので、迷うことは無い。頂上直下から1時間、10:45に幕営地に戻った。

「だいぶ埋もれたテント」

テントの中で一息ついていると、また師匠から電話。なんともう太兵衛平まで来てるらしい。下りもトレース無いし、2時間くらいは掛かりますよ、と伝えて、いそいそとテントを撤収、下山に掛かる。2人組テントまでは急であるものの何てことは無かったが、そこから下の3人組テントまで、まさかの大迷い。そのパーティも迷ったらしく、そっちのトレースを進むが、その後、急な沢状。GPSを見ながら大分クルクル歩いて、ようやくかろうじて残るトレースらしきものの先に赤リボンが見えた。20分くらいはロスしたと思う。しばらく下ると3人組がテントを撤収していた。昨日は分かり易い尾根だなぁ、なんて思っていたけど、トレース無いと、分かりにくいところが所々出てくる。さっきのようになりたくないので、都度、GPSで確認。リボンもあるので、確かめながら慎重に下る。
18000mくらいまで下ると、尾根も大きくスッキリしてきて、大分分かり易い。トレースの跡も少ししっかりしてきた。ぐんぐん下って、そろそろ電線のある尾根への取り付き地点かというところで、前からソロの登山者が。これから天気悪くなるのに、変わった人も居るもんだなぁ…と良く見ると師匠だ!下で待ちきれず、登ってきたらしい。しばし、久しぶりの再会を喜んで、一緒に下る。太兵衛平まで下ると、師匠が「ビール飲む?」と聞いてくる。坂巻温泉で飲もうという意味かと思って、「飲みます飲みます」と答えると、ザックをゴソゴソし始めて、ビール(それもエビス!)を取り出した!再会の祝杯を交わして、釜トンネルに戻り、坂巻温泉で宴会して帰りました。

「さすが師匠!」

「坂巻温泉で雪見風呂♪」

【感想】
ž アプローチが短く土日で行けるので、手軽な雪山として良いルートだと思った。霞沢は毎回、天気悪くて、その魅力が分からないので、次こそは天気の良い日に穂高を眺めながら登りたい。
ž 雪が少ないと下部の笹がだいぶうるさいと思うので、時期的には年末から3月くらい?雪解けが早いと3月下旬は遅いか?
ž ロープは不要。超初心者が居るなら、あったほうが安心かもしれないけど、ほんの数mだけなので、むしろロープ無しで登れるようになってから来る方が良い。
ž 2450mでもテント張った記録も有ったが、どこだか良く分からなかった。とはいえ、2人用テントまでなら、いくらでも張れる場所はある。大きいテントなら2000m手前が良い。