20220604

御在所(前尾根・一の壁)無雪期アルパインクライミングの練習(2022/6/4-5)メンバー/西川 小林 柳川 寺岡 鬼川

山域
御在所(前尾根・一の壁)※無雪期アルパインクライミングの練習
日程
2022/6/4-5
メンバー
西川、小林、柳川、寺岡、鬼川
コースタイム

詳細
 

取り付きまで

 7時30分過ぎ 裏道登山道の駐車場に着くが車がいっぱいで、2台で来た私達は別々の場所に駐車。鈴鹿スカイライン、路肩も結構車が泊まっていた。今回お世話になる日向小屋は裏道登山道入口から10分程歩いたところ。親子で経営されておりアットホームなお宿でした。日向小屋から前尾根取り付きまでは約1時間、小屋すぐ横の砂防堰堤は全く水が流れておらずいつも裏道登山道で下山してきた自分としては景色すら違って見えた。裏道登山道藤内壁看板から沢を渡り前尾根の取り付きに到着するとなんとざっと数えて14人待ち(1P1人5分としても約1時間半待ち)。まるで千葉にある某アトラクション施設。実際ここに来るまでの駐車場にはその千葉ナンバーがたくさん停まっており遠征している人にとっても大事な山行なはず。私はこの待ち時間に西川さんよりカムの使い方の講習を受ける。

1日目:前尾根(1P 小林 柳川 寺岡)(2P 西川 鬼川)

 P7 ノーマルルート(前半) セカンド

 まずは小林師匠パーティが行く。寺岡さんがリードですいすい登っていき、次に柳川さん、小林さんと登っていく。前のパーティにすでに詰まっている様子で登り始めても混雑感は否めない。次に西川さんと私が西川さんリードで出発する。ちょっと待って、よく考えたら私ここに一人になる?急ガタガタ震えてくる。そもそも寒い?よくわからないけど緊張で若干寒気を感じた。(多分本当に少し冷たい風も吹いていたと思う)それから独り言の嵐。何回「わからへん」って言ったのだろうか。しかも最初のピッチでまぁまぁ前腕疲れてこの先がいささか不安になる。

 P7 後半

 少しだからと言って西川さん指示見守りのもとリードさせてもらう。初端、外に出っぱった鼻みたいな三角の岩(カンテって言うのかな)を、なんとも乗り越えることができない。というか足が上がらない。かなりの時間を費やした。先に行った寺岡さんの登り方を思い出し真似してみるが、全く参考にならず実際岩に手足をかけると全然感触が違う。何度か挑戦するが見兼ねた西川さんが、どうしても無理なら最後の手を教えると言われる。そう言われても何とか登りたい。「あと2回チャンスください」って2回トライするも結局乗り越せず、ペツルにカラビナあぶみをかけて足場を作る方法を教えてもらいなんとかクリア。その後、なぜかなんでもないところで滑り落ちてコンタクトレンズ片目(1DAY使い捨てタイプ)がどこかへ消えた。いつもならすぐに取り出せるところに入れているのにザックの中にしまっていたため少し時間がかかってしまった。

 P6 クラックルートからリッジルートへ(これは後で寺岡さんが教えてくれた)

 またまた最後のフォローのため1人で登りはじめ。おもしろいくらいに全く登り方がわからない。これまでも前の人の登り方を参考に自分なりをも試してみるを繰り返してきたけど実際自分が登ると全く思うように体が動かない。このピッチも少し前に登っていた柳川さんがクラックに起用に足を交互に入れ、手をジャミング?しているのを真似しようと企んでいた。がしかしジャミングって何?状態。そして先に行った西川さんの姿は全く見えない。「どうやって登るんですか ?」と何回叫んだことか。最初の一手を悩みに悩み抜く。また結構長い間待たせたと思う。それでも何とか登らないといけないので、いろんな登り方を試していると突然、手を横に貼って足を突っ張りながら登る、いわゆるレイバックってやつ?でサクサク登れる。嬉しくなって西川さんに「登り方わかりました。」と今日一番のいきいきした声でさわぐが当たり前に反応なし。クラックを調子よく上がっていくと最後登り上げる時、最後のカムを回収した瞬間、フォール。人生初フォールで、思いがけず思いっきり落ちた。怖くて何で落ちたかも正直覚えていない。おそらく右手でクラックを引き寄せ左手を伸ばしてカムを回収する時の足が安定しておらず滑り落ちたのだと思う。先行の小林さんの声が聞こえて「大丈夫?そこまで来れたら行けるから。カムをなんとかもっかいどこかに突っ込んで登っておいで」とのこと。さっき調子乗って回収したカム(おそらく0.75だったと思う)をもう一度最後の水平のクラックに入れA0気味に登ろうとするがさらに、その持ち方が悪く(おそらくカムの引き手を握ってしまっていた)2回目のフォール。これも予想外すぎて怖い。「これ以上先に進めるのか不安になる。さっきレイバックが上手くいった時の自信をつけた自分は一瞬できえた。それでも最終、落ち着いて丁寧にカムをきめ、なんとかテラスまで上がる。やっと西川さんに会えホッとする。「落ちました。登り方全然わからなかったです」と少し反抗する。「自分で考えるからええんやん。最初から登り方教えてもらってたら面白くないやろ?」と深い言葉をいただく。確かに。。。?と納得?する。人に見せれないレベルの登り方を試した結果レイバックにたどり着けたのは本当に良かったと思う。

 P5 ノーマルルート 岩登り

 西川さんに「ここはコンテで登ろう」と「コンテってなんですか?」と私。まだまだ用語の調べが甘い。ロープを出さず登り、しばらく歩くと小林さんPに出会える。話を聞いていると私がフォールした時に上では柳川さんのカラビナが落ちたらしく中間地点の先輩方はカオス状態だったらしい。ここで少しお昼を食べ腹ごしらえする。色んな意味でアドレナリンが出まくりで、何を食べてどんな味だったかは覚えてない。

 P4 ノーマルルート リード
 わりかし斜度の緩い岩登りをリードさせてもらう。この時初めて先に行った小林さんPが「ここにキャメロット♯1かかってるよ〜」など優しいアドバイスと最初のランニングの取り方のヒントを与えてくれる。最初のうちはヒント通り進むが中盤からどんな間隔で支点を安全に確保するか難しくなる。以前百丈岩で小刻みに支点をとりすぎて途中足りなくなったことを思い出す。終了点までの予測が甘かったと反省しながらゆっくり考えさせてもらいランニングをとっていく。先には小林さんPがいるしそう離れず登り始めたつもりでいたので終了点付近で会えるはず。のつもりがやはりそんな甘くなかった。おそらく終了点に着いたが誰もいない。とにかく安定しているためセルフと引き上げの支店構築、ビレイ解除コールをする。ランニングの取り方が左右に振られすぎて悪くロープ持ち上げるのがめっちゃ重くてまた時間がかかる。何とか引き上げ終了。ランニングの取り方は登る方向も引き上げのことも考えて屈曲は少なめにとるようにしようと痛感した。すでに腕は色んな意味でプルプルしている。

 P3 順番待ちの間

 先行パーティが多くまたま順番待ち。少し休めると思うと正直ホッとしていたのも束の間、順番待ち多いし「スラブの練習や!」と西川さん。有無を言わさずスラブ取り付きライン下へいく。西川さんは軽快に登っていく。こんなところ登れへんって思いながらも今日のバディは西川さんだし登らなければと覚悟を決め挑戦する。でも案の定足もきまらない、手も持つところないことで恐怖の連続。必死すぎて最初のプロテクション回収するまであんまり覚えてない。ただ自分の涎が足下にポタッと落ちたことを記憶している。2個目のプロテクションを回収しようと手を伸ばすとずるずる落ちる。「やめていいならやめたいです」と懇願する。メンバーチェンジ。セカンドで寺岡さんが登っていく。寺岡さんが登りながら、登るラインを教えてくれた。スラブの足の悪さを知り、挑戦したいという気持ちはもうなかった。



 P3 リッジルートからクラックへ

 その後私は小林さんチームに入れてもらい柳川さんリードで登っていく。途中クラックゾーンで柳川さんがカムの掛け方に苦戦している。クラックゾーンが2本あるが今回は右側のクラックから。セカンドで上がらせてもらうが難しい。そして思った以上に岩にへばりついてしまい、ビビって外に出れず自分の可動域が狭くなるを感じる。このピッチは幸い後から登る小林さんが足の置き方のアドバイスをもらうことができ登れた。見ながらイメージしているとていけそうなのに、実際の岩は全てにおいて甘くない。リードに感謝と改めて感じた。

P2 やぐら

取り付いた時間はすでに夕方の16時半だった。天気が良いので明るいが影の部分が多い。この時間に最終ピッチに挑戦できるのは本日日向小屋に泊まれる者の強み。お腹が空いて少し気を抜くとまぁまぁなボリュームでお腹が鳴る。寺岡さん、柳川さんペアが登った後、私は小林さんリードのセカンドで登る。みんながスムーズにクリアしていた最初のクラック部分で苦戦。心折れそうになっていると西川さんと寺岡さんが「痛いと思うけど足をつま先から突っ込むねん」とアドバイスをくれる。私「こうですか?」西川さん「いや、違う」私「じゃぁこうですか?」西川さん「いや、まだ違う。もっと思い切ってつっこむねん」と。こんなバレリーナみたいな足にしていいのかな?と思いながらも思いっきり突っ込むと「それや!きいてるやろ?」と西川さんと寺岡さんが声をそろえる。私「あ、めっちゃ痛いけど力入りやすい。」でクリア。ほぼ辛くてガムシャラに登ってきた前尾根で3つ目くらいの喜び。足が効くってこのことなんやなって身体で知った瞬間。その後、核心の便座は案の定、またまた中に入り込みすぎてしまい岩にへばり付く。途中、もう私はここに置いていかれるのだろうと思うくらい時間がかかった。17時は余裕で超えている。最終、本日2回目のあぶみに足をかけ、何とか小林さんの元へ到着。達成感は半端なかったけど悔しさの残る最終ピッチとなった。その後裏道登山道にて日向小屋へ何とかヘッデンは出すことなく到着。初のマルチピッチを何とか終えて最高のビールをいただきました


2日目:一の壁

若干飲み過ぎたと反省しながら起床。朝ごはんをいただき出発。藤内沢出合のルンゼを昨日とは反対の左にそれて15分くらいで一の壁取り付く。すでにたくさんのクライマーの皆様で賑わっていた。前日順番待ちをしていた顔ぶれもちらほら目にする。私は初めての一の壁の高さに少し怖気付く。1本目、西川さんリードで2ルートを行く。足場がしっかりしているため登れる。2本目、3ルートを柳川さんにビレイしてもらい初リード。登る前、小林さんよりフリーでのランニングの取り方の注意点やヌンチャクの使い方のレクチャーを受ける。先行者の登り方をじっと見てイメージをわかす。いざ登り始めるが目の前の手や足ばっかり見過ぎて、イメージしていた場所に迎えない。足や手で迷っていると下から的確なアドバイスを受ける。あらゆる方法と自分が安心できる手や足場を見つけて登っていく。途中小林さんから「そこはあなたが好きなレイバックよ」と言われ、前日嬉しがってつけあがっていた自分を恨む。それくらい全然わからない。進めないでいると「1回落ち着いて深呼吸」と言われ息をしてなかったのではないかくらいに我にかえる。下部の若干被った岩に入り込んでしまい、また怖くて外に出れなくなる。(振り返って見直してみるとイメージしていた場所より左側へ登っていたことを知る)アドバイスを受けながら一旦自分の思い込みルートをリセットして落ち着いて登ろうと思うが、手が悪くなるとたちまち怖くて足がめちゃくちゃに震える。それでも思い切って足を変えないと登れない。そして今更引き返せないと踏み込んだ瞬間フォール。体感では結構落ちた。本当に怖かった。それでも痛いとか怖いより早く終わりたいが強いのか、やけに冷静にメンバーの声が聞こえる。「少し手を休めて冷静に登って」とみんな優しい。後から思うと少し落ちて足の置き場を変えやすくなった。中盤を過ぎてから終了点近くでまた隣の終了点に辿り着きそうになるミスもあったが、何とかリカバリーし到着。着いた瞬間、他の山岳会の方から「よーやった。誰もが通る道や」と声をかけもらい涙が止まらなくなる。さらにセカンドで登ってくる柳川さんの顔を見てボロ泣き。怖かったのと感動と柳川さんにビレイしてもらって二人で登れた感動で自分の感情が忙しかった。

感想と今後の課題

前尾根では“レイバック”という技術を実感できたこと(ただ誰も見てないので本当にできていたかは謎)、ヤグラでは足の足首から足底足背全てに岩につけることで足がきまるという瞬間を味わえたこと(かなり痛かった)、そして比較的安定したP4でリードさせてもらえたことが嬉しかった。クライミング技術はもちろんの事、ランニングの取り方やロープの束ね方が雑なとことろに反省が残る。なるべくロープを屈曲させないようアルパインヌンチャクなどの使い方を幅広く考えてく余裕を持って登れるようになりたい。全ピッチにおいて覚える事、考えることの連続で頭はパンク寸前だった。それでも、いろんな方法を使って登れた瞬間の楽しさと、これまで見たことのない御在所からの風景を見ることができていろいろな意味で最高の前尾根であった。一の壁は前日、前尾根でバキバキになった身体で登れるのか本当に不安だった。しかし、いざ岩を目の前にすると意外に身体は動いて少しホッとした。ルートの把握が甘く、登るイメージが不足し過ぎで、メンバーからの声掛けがなかったら絶対に登れていなかった。いつも良い持ち手を探すのに必死で、足で登ることに意識が薄いため、今後はしっかり足の置き場を考えて登るよう心掛けたい。
今回、御在所メンバー皆様に支えてもらいながら、初めてのマルチピッチとフリークライミング(初リード)を経験することができました。初心者の私が怪我なくたくさんの経験を積むことができ本当に感謝です。個人的に一生忘れることのない山行となりました。


記録/鬼川