20220709

2022/7/9-10 前穂高岳北尾根 メンバー/西川 柳川(記)

山域
前穂高岳北尾根
日程
2022年7月9~10日
メンバー
西川 柳川(記)
コースタイム
7/8(金)
20:30大阪発
1:15あかんだな駐車場着

7/9(土)
5:20あかんだな駐車場発
6:00上高地発
8:05横尾
10:30涸沢
11:18涸沢発
13:25北尾根5・6のコル着
15:50北尾根3・4のコル着

7/10(日)
4:00起床
6:00登攀開始
8:50前穂高岳登頂
12:25岳沢小屋
14:25上高地
感想
7/8(金)
 21時の予定を少し早めて20:30大阪発。映画や木曽・信濃の武将の話をしていたらあっという間に飛騨清見ICに着いた。中部縦貫自動車道に入らず誤って下りてしまい、対向車もいない曲がりくねった国道158号を進んであかんだな駐車場に到着。翌週の三連休が控えているからか、駐車場は空いていた。数々の星と天の川もくっきり見えて、翌日の天候に期待ができる。

7/9(土)
4時起床。車の台数通り長蛇の列にはならず、バスには30人程度が乗車。徳沢から横尾までは登山道の工事中のため迂回路(梓川右岸)を行く。1人なら明神・徳沢・横尾をちょうど1時間ずつ歩くところ、西川さんに引っ張られて2時間で横尾に着いた。その後も大汗をかいて給水不足のため足をつりそうになりながら、自分史上最速で涸沢に到着。
涸沢ヒュッテでカレーライスを食べ、給水する。水は最低3l必要と見るが、不安なので4l担ぐことにする。ヒュッテの裏の雪渓を渡るがつぼ足では難しく、チェーンスパイクとピッケルを出した。雪渓を登るのは初めてで、チェーンスパイクの爪が短いせいもあるのか、足が下がって進むのに時間がかかる。ひんやりと涼しい雪渓を1時間弱登って雪が融けた踏み後に合流。ただこちらもガレて浮石だらけで遅々として進まない。数々のクライマーに踏まれているはずなのに、まったく安定していないことに驚く。何度も落石させたが、幸いなことに後続がおらず助かった。最後はザレて傾斜が急で何度もズルズルと落ちてしまった。西川さんから10分ほど遅れて5・6のコルに到着。細尾根が伸びた先に堂々とそびえる5峰とは対照的に、6峰はなだらかで斜面にはお花畑が広がっている。コルにはテントが3張は張れそうだった。携帯電話の電波が届くので雨雲レーダーを確認すると、20時頃雨が降り出しそうだ。なんとか天気も持ちそうなので、予定通り3・4のコルを目指して5峰に取り付く。稜線だが無風で安心できる。
5峰は岩場に咲く花と涸沢カールの絶景を眺めながら高度を上げていく。浮石はあるが、慎重に歩けば問題ない。ただ持ち上げられなさそうな大きさの岩も動くため、つかむとき・乗るときには体重をかける前に安定しているか確認する必要がある。西川さんに「岩は動くものと思え」と言われる。
細尾根が頂上に導く5峰とは異なり、4峰は眼前に要塞のようにそびえたち、いくつものルート取りができそうだ。「4峰はロープを出さない」と言われ戸惑ったが、西川さんのルーファイ能力は目を見張るものがあり、おそらく一番易しいルートを進むことができた。得意のオブザベ(インターネットでの予習)では4峰が落石地獄とされていたのに、ルートさえ誤らなければ岩の剥落も少なく難しくない。むしろ5峰の方が落石を発生させがちだった。
予定通り3・4のコルに16時にはテントを張ることができた。おそらく何百回とテントを張られたのであろう、素晴らしく整地されガイライン用の岩もちょうどよい場所にある。キャンプ指定地の涸沢の地面とは雲泥の差だ。奥又側の斜面には雪が残っているが、まだ陽がありテントの中は暑いので外で夕食をとることにする。夕食と言ってもこのメンツなので、ワインとウィスキー、酒のアテで終了して食事らしい食事にはならなかった。陽も落ちて冷えてきてからテントの中で話していると、予報通り雨が降ってきた。21時には就寝したが、その後弱雨に加えて強風となりなかなか寝付けない。おまけにやたら風を感じて寒いと思っていたが、朝目を覚まして見ると、なんとテントのドアがメッシュしか閉まっていなかった。テントの持ち主である西川さんも夏なのに寒いと思いながら寝ていたらしい。

7/10(日)
3時起床。テントの外を見てみるが、夜明け前の暗さでもわかるほど白い霧が立ち込めている。雨は止んでいるがどうせ岩も乾いていないので、もう1時間寝ることにする。4時に再度起きて朝食をとるが、どうにも食欲がわかない。なんとか食べきったが今回も2食分くらい食料を持ち帰ることになりそうだ。天候はまったく変わらず、雨が降らない代わりに風もなく、ガスは一向にとれない。
少しでも岩が乾くことを期待してゆっくり過ごしてから、泊まっていたコルから数メートル上がって3峰に取り付く。6時登攀開始するが、準備をするうちに小雨が降ってきた。しまった、これなら5時に行動開始したほうがよかったか。この後も1日霧雨が降ったり止んだりの山行となった。岩が濡れているので信用のおけないクライミングシューズは履かず、登山靴のままリードはすべて西川さんにお願いする。
1ピッチ目は大岩を左側(奥又)から回り込む。50mロープを半分も出さないで終了したが、1か所カムを入れてもらった箇所が難しかった。2ピッチ目もカムを入れてもらったチムニーに体が入り込んでしまい、外に出られずもがく。3ピッチ目はよく予習で目にした幅1m強のチムニーで、これまた予習通り、古い記録では進路を妨げていたチョックストーンが崩落して浮石の一部となっていた。チムニーを抜け右に大きく曲がって終了。3ピッチ目が一番長かったが安心して登れた。3ピッチ目終了時点で7:30だった。この後は歩きだろうと涸沢側を歩いていくが、足場の段差も高く直上の岩もかぶっていてロープを出さないと厳しそうな気配だ。西川さんのアンテナが働き、少し懸垂して偵察してもらうと奥又側から回り込むほうが簡単だということになった。ロープなしで大丈夫と言われたが、ロープを希望して出してもらった。結果、距離は短いが私には脚の長さの問題で厳しい箇所があったので出してもらってよかった。まったく距離もないのに迷ったことで1時間かかっていた。2峰は3峰の肩からちょこんと生えているような小ささで、頂上付近は短いナイフリッジになっている。そこを越えるとすぐに懸垂地点で、7mほど下降する。難しくはないが、ここも足場が悪く、私が降り立った岩も動いて怖い思いをした。さて、残すは主峰だ。少々標高差がありそうだが、5峰や4峰の経験を踏まえると、見た目ほどはきつくないはずだ。案の定あっさりと登り切り、ガレた前穂高岳山頂に到着。山頂にもテントを張るために岩をよけた場所があった。1日半かけて登頂した前穂高岳は、折からの霧雨で真っ白だった。展望も何もないが、とりあえず充実感はある。
頂上から紀美子平までは一般登山道といえども岩だらけで気が抜けない。そのあとも重太郎新道は噂に聞く厳しさで、濡れた岩場を下るのも怖いし、登りもなかなかきつそうだ。何度か滑りそうになり、実際に1度足を滑らせ左脛を強打した。正午には岳沢小屋に着けるだろうかと甘く考えたが、やや遅れて12:25岳沢小屋着。荷物を整理しがてら休憩して、重太郎新道より格段に歩きやすくなった登山道を下る。道はよくなったが疲れが出てきていて、数回転んで足首をひねった。3月に痛めた左足首の完治は遠のくばかりだ。なかなか標高が下がらずイライラし始めた頃、西川さんの「14:30のバスに間に合うかもなぁ」という言葉で尽きかけのやる気に火がついてペースアップ。雨なのに観光客でにぎわう上高地を急ぎ足で通り過ぎ、希望のバスに乗ることができた。発車してすぐにそれまでの霧雨・小雨とは異なる激しさの雨が降り始め、胸をなでおろした。ひらゆの森で汗を流し、西川さんお気に入りの定食屋を堪能して帰阪。2日ぶりの大阪は暑かった。
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