20220807

8/7-12 (前半組) 剱岳 無雪期アルパイン 森田 中嶋 吉田 小林 平野 柳川 鬼川

山域
剱岳
日程
2022年8月7~12日(前半組)
メンバー
吉田、森田
コースタイム
 
感想
 お盆前のサマーバケーション、3年ぶりの夏剱。事前に島根半島での岩トレと大山での歩荷トレをこなし、ワクワクして本番を待った。
 計画は森田さんをパートナーに、熊の岩ベースでチンネ左下カンテ・左方カンテを企んだ。

8/6土
 旅の始まり。1130 松江駅発大阪行高速バス。曇り、32℃。蒸し暑く家からバス停まで歩いただけで汗だく。冷房の効いたバスに乗り込み、人心地つく。Tシャツ短パンビーサンにして良かった。
 米子道の大山PA辺りから夏空になった。2回目の休憩地加西SAでバスへの戻りが遅れ運転手にひどく怒鳴られる。謝って乗り込んだが、たった1分の遅刻。悪いのは私だが人前で怒鳴るなよ、小さいやつめ、このハゲ。
 定刻15分遅れで阪急梅田到着。座席ポケットのチラシに、「アンケートに答えると抽選でQuoカード2,000円当たります。」ってあったのでスマホ回答するが、なぜか運転手のフルネームが必須になっており、仕方ないから降車時に名前を聞いた。運転手が「これです。」と出入口付近の名札を指差す。「杣○ △×」と書いてあるので、「あー、ソマ○さんですね」と言ったら、まともに読まれることが珍しいらしく、「嬉しい!」と、ほんとに嬉しそうだった。よかったね。
 30分後同じ阪急梅田で森田さんと落合う。事前に茶屋町ローソンで買ったビールとアテ持って、1750富山へ出発。乗車率90%。一昨日からの大雨で北陸道が福井で全止のため東海北陸道へ迂回。バスは長良川沿いを順調に走る。ふと思い出す新婚のころ、西穂登山と長良川ラフティングを妻と二人で旅したことを。思い出は美化される。
 運転手によると国道8号も福井で全止、JR北陸本線も運休らしい。2410 富山駅前到着。地鉄ホテル軒下にて地べたにマット敷いて寝酒を嗜みごろ寝した。

8/7日
 曇り空が晴れていく中、0520電鉄富山駅の始発に乗る。立山駅は自家用車組が合流し混雑している。ケーブルカー1時間待ち。駅玄関で100Ⅼ超のザックの学生3人を見かける。聞けば関西学院大学の山岳部で真砂ベース長次郎、源治郎、雪訓を計画しているそうだ。若さが眩しい。卒業したらアルデに来いよ。
 0730ケーブルカーで立山駅発 0920室堂発 雷鳥沢は多くの人が行き交い賑やかだ。暑くてTシャツ短パンが丁度いい。寝不足と重荷で二人ともふらつき気味。ただお花畑に癒やされる、オレも年とったもんだ。最後の登りは第一応援歌、紺碧の空を10回くらい繰り返した。1430別山乗越着。5本かかった。ガスで視界は前剱まで。前剱も単独で見ればなかなか格好いいねと話した。
1520カラフルな剣沢キャンプ場到着。二人で示し合わせたかのように、ここで打ち切りとする。
 アライエアライズ2を設営。明日はデポ回収し熊の岩まで行くことを確認し就寝。

8/8月
 晴れ。元気も回復。0450 夜明け前の空に漆黒に聳える剱本峰を眺め出発。ダブルストックで快調に進む。武蔵谷手前で雪渓に降り立つ。雪の感触、夏剱を実感する。ちなみに足まわりは新調したTXガイドと韓国製軽アイゼン。
 源次郎谷出合を過ぎ、長次郎谷出合で一本。まずはデポ地の早大岩小屋付近まで登る。岩小屋は手前に大きなクレバスがあり近づけない。森田さんがこれを見越して、2週間前のデポ山行で本流の岩盤上にデポしている。これを回収。デポ品は、350ml缶ビール21本・焼酎かのか2㍑・トイレ用資材(テント・ポール・便座土台用の骨組み(これが重かった…)などなどで後で計算したら25㎏程度だった。鬼川の頑張りに驚きだ。ダブル歩荷する案も出たが、熊の岩との往復は考えられない。腹を括って一発で上げることにする。ワンゲル仕込みのパッキングでライペン「マカルー70L」を100Ⅼくらいまで膨らませる。雨蓋も入りすぎるほど入る。
 背負うのが一苦労、まるで重量挙げだ。熊の岩まで4本かかった。自分の荷が感覚として25㎏くらいだったので、合計50㎏ほどか。学生時代含めて最強の歩荷となった。辛くてずっと浜省を歌う。「家路」にパワーをもらった。1100着、疲れた。ここは岩と雪に囲まれた別天地、素晴らしいテン場。
 他には誰もいない。後で3人1組が来てテントを張った。自分たちのエアライズと後半組の場所取り用ツェルトを設営。
 午後からAフェース魚津高校ルートで遊ぶ。2時間ほどの快適なリッジ登攀。16時に熊の岩帰着。
 その後残業して森田さんの共用トイレ設営を手伝う。洋式で落ち着いて用を足せる。以降他の人たちにも大人気だったようだ。2030就寝、静かで涼しくぐっすり眠れた。

8/9火
 4時起床、今朝もラーメン。隣のスペースには、夜間入ってきたビバーク5人組が着の身着のままで座っていた。
 0610チンネ目指し出発。右俣雪渓はガスの中、途中クレバス2か所を通過し0719池の谷乗越。8時、三の窓。ここで森田さんが意味深な言葉を発する。いやいやまだまだ行けますよ、目指せ80歳現役クライマー。
 ゆっくり準備して9時過ぎ取付きへ。剱岳チンネ。そのロケーションと風格、ラインの良さ、そしてアプローチの困難度、いずれも日本の岩場では超一級と言える。
 左下カンテは、ガスが濃いままで岩は濡れている。二人の体調と力量を考慮し、右隣の左方ルンゼへ転戦する。記念すべきチンネ初登ルートである。気を取り直し登るも、15m上がったところでルンゼは大きく右上している。目の前の垂直の凹角が目に留まる。なかなかに立派なラインで、残置ハーケンもあり、方角的には左隣の左下カンテに沿っておりあながち間違いでもなさそうに思えた。取付いてみる。凹角右壁に足を突っ張り左壁の縦フレークを掴む。つまりレイバック。濡れており非常に厳しい。ワンテンしながらも約20mでピッチを切る。森田さんの指摘でこれは派生ルートでこの上もさらに厳しいクライミングが予想される。降りることにする。岩角に捨て縄捨てビナ(各2)し、ロワーダウン。怒られました。
 またも気を取り直し、改めて左方ルンゼを辿る。傾斜緩くホールドもあり易しいはずだが濡れて浮石多発し緊張する。3ピッチ目は大きく左に曲がり下部はチムニーをドロドロになってずり上がった。4ピッチ目は適当にあたりをつけ、尾根上のコルに出る。途中、ブラダイ70cmストレートシャフトピッケルが落ちていた。コルから反対に顔を出すと、前方左にクレオパトラニードルが聳えている。どうやら左稜線の核心T5手前に出たようだ。
 このころからガスが雨に変わる。時間も押しているので淡々と登る。森田さんがフォローするころには本降りになった。ここから確か3ピッチだったと思う。17時ごろチンネ頂上。かなり大粒の雨で体が冷える。休憩はせず池の谷へ下る。途中から10mほど懸垂し、池の谷に復帰。来た道を登り返し、乗越から雪渓下りを経て、19時前に帰着。少々のんびりし過ぎたか、長時間行動になってしまった。夜は雨が上がり月が綺麗だった。

8/10水
 休養日。曇りのち晴れで濡れを乾かすことができた。
 森田さんとの山談議。昔も今もここから山の知識と意欲が生まれる。この時間が大好きだ。

8/11木
 雨のち晴れ。午前中、暇なので熊の岩上部を試登する。3級のスラブでホールドは豊富。残置はないのでフリーソロで慎重に登る。50m1ピッチで切る。樺の幹に捨て縄して懸垂。50mダブルが必須。
 午後、仲間の到着を待つ。3時ごろ、双眼鏡に早大岩小屋付近を上がってくる姿が入って来た。サブザックを持って迎えに行く。丁度デポ回収した地点で合流する。やっと仲間に会えた!
 先頭は玉ちゃん。私を見るなりザックが小さい、とたまき節炸裂。平野さんはケガから復帰され、穏やかに歩を進めている。山好き新人鬼川、元気だ。中嶋さん、病み上がりなのにようこそいらっしゃいました。最後に新人柳川、遅れてはいるが持ち前の明るさで頑張っている。
 メインザックにしたらよかった。つい先日の歩荷の辛さを思い出してザックを小さくした自分を小さく感じる。みんなゴメン。
 夜のダンロップV6の楽しいこと。あー、ずっとここにいたいなー。満月の夜が更けていく。何時に寝たか覚えてない。

8/12金
 私の下山日。7時、Cフェースに向かう仲間と留守番の森田さんに別れを告げる。
 松江までの帰路。下山開始して間もなくガスが降りて小雨が混じる。鼻歌には浜省、スピッツ、あいみょんが続く。6時間後、室堂到着。久方ぶりのプチ単独行。これはこれでいいものです。
 旅の終わり。猛暑の下界を終電で松江に向い次の山を想像していた。

記録:吉田
写真