20220811

8/11-15 (後半組) 剱岳 無雪期アルパイン 森田 吉田 中嶋 小林 平野 柳川 鬼川

山域
剱岳
日程
2022年8月11~15日 (後半組)
メンバー
森田 吉田 中嶋 小林 平野 柳川 鬼川
コースタイム
8月11日
8:35 室堂
9:10 雷鳥沢キャンプ場
11:15 劔御前小屋
12:40 劔沢小屋
13:45 長次郎出合
14:45 熊の岩

8月12日
6:30 熊の岩
7:12 Cフェース取付き
7:20 Cフェース 剣稜会ルート登攀開始
10:56
11:13 CフェースからAフェース移動
12:30
13:00 Aフェース登攀開始
14:57 登攀終了
17:00 熊の岩

8月13日
6:40 熊の岩
7:15 Aフェース魚津高ルート取付き
7:30 Aフェース 魚津高ルート登攀開始
9:40 Aフェース 魚津高ルート登攀終了

8月14日
5:20 熊の岩
6:18 池ノ谷乗越〜池ノ谷ガリー
6:53 三ノ窓
7:40 チンネ 中央チムニー取付き
8:20 撤退
9:25 三ノ窓
熊の岩

8月15日
8:30 熊の岩
9:20 長次郎出合
11:13 劔沢小屋
14:16 雷鳥沢キャンプ場
16:06 みくりが池温泉
15:19 室堂ターミナル
感想
8/10 立山駅までのアプローチ
待ちにまった夏合宿。某感染症のなんとか株の流行でもしかすると中止になるかも、その時は私が運んだビールはどうなるのだろう?と内心ヒヤヒヤしていたが無事に多賀のSAで皆様に合流。楽しみすぎて早く出た甲斐があった。23時待ち合わせであったが22:20に到着。その3分後に森田号も到着した。SAでは中嶋さんに気づいて貰えず目の前で私に電話をしていた。まだまだ顔アピールが足りていない。ここで柳川さんが助手席に乗ってきてくれて吉田さんの小川山の山行記録の話でめっちゃ盛り上がった。私にはクライミング用語が難しく、今回もまた柳川さんにいろいろ解説してもらった。ひるがのSAで休憩をはさみ、立山に着いたのは4時。心ばかりの仮眠をとった。(暑かったり隣の車の登山者のおそらくザックをエブリちゃんにぶつけられたりでほぼ3人とも寝れていない)

8/11 夏合宿1日目 天気:曇
5:45 起床 7:00 立山発 8:00 室堂着、登山客、観光客でめっちゃ人が多い。8:35それぞれに準備を済ませて出発。9:10 雷鳥沢キャンプ場 ここでふと中嶋さんを見るとキャップがMARVEL(アメコミ)!!中嶋さんは細身でスタイル良くて格好よく今日もスタイリッシュで全身、山ブランドでキメている。かと思いきや急にコミカルなキャップがてっぺんに、絶妙にフィットしていてなんだかツボにハマってしまった。「これええやろ?」と何だか自慢気。すごくお似合いでした。小林さんがここから先1回しか休憩しないと言う。すでにザックの重さに負けそうな私はせめて2回と懇願する。懇願したものの、この後、小林さんに追い付けたのは、休憩1回のみで、コソコソ一人で岩に荷を預け小刻みに休憩しながら遅れまくって登った。言い訳をすると、今回は初めてロープや登攀道具を担いでの山行であり、重さの重心が低くやたら腰に負担がかかった上半身がずっとだるかった。やはりパッキングの方法と軽量化に課題を感じた。この雷鳥坂の登りが辛すぎて一瞬こんなにしんどかったら私一人辿りつけないかも?と思うほど辛かった。平野さんと柳川さんが励ましてくれて本当にその声かけに助けられた。11:15 劔御前小屋 前回雨風の苦行だった森田さんとの荷上げ小屋泊を思い出す。ザックを下ろしおにぎりを食べるとかなり復活、またすぐに出発した。12:40 劔沢小屋 劔沢から長次郎谷の情報を得る。劔沢の雪渓は1か月前に比べると融雪が進み森田さんが危険と言っていたスノーブリッジ、クロユリの滝がちゃんと滝になっており落ちた先の雪渓をさらに溶かしていた。13:45 長次郎出合 また登りかぁ、と気合を入れ直す。これを登るとゴールだと、少し気持ちは楽だったが、思わず「森田さんと吉田さん迎えに来てくれないかな」と弱音?本音がもれる。小林さんが一度無線で連絡してみようかとコンタクト試みるが反応なし。この荷物だと3時間はかかると話しながら登り始める。とにかく上はあまり見ないで一歩一歩足を進める。森田さんに荷上げの時に教えてもらった早稲田の岩小屋が見えた。言ってた通り雪解けが激しく大きなシュルンドになっていてとても渡れそうにない。あそこにデポしなくて良かった。そして前回荷あげした岩が見えた瞬間、先を登る小林さんが誰かと喋る声が聞こえた。吉田さんだー。めっちゃ爽やかな格好をした吉田さんがいる!!「よくがんばった、ダンソウはもらう。」と言ってくれる。ダンソウってなんだ?ってなりながらも拝みたくなるくらい嬉しかった。ダンソウは団体装備の略らしくコッヘルと食材を持ってくれた。重さが麻痺していて、あまり変化を感じないが少し軽くなった気がした。それでもやっぱり、熊の岩までは長い。テン場がみえても長い。近そうで長い。吉田さんにアイゼンでもキックステップが大事であることや、ストックの使い方を教えてもらいながら登った。優しさが染みるが横で小林さんが「なんでそんな小さなザックできたの」とぼやいている。さすが、小林さん、私も早く小林さんみたいになりたいと強く思った。
16時40分、なんとか熊の岩に到着。左に源次郎、右に聳え立つは八ツ峰6峰、振り返ると後立山の山々、その真ん中に熊の岩にたどり着いた私たち。まさに楽園。ガスったりすっきり見えたり、雲の動きと一体化するこの山の深い感じがなんとも言葉にならない。ワクワクが止まらなかった。しばらくすると八ツ峰に源次郎の影が映ってなんとも美しい。それを横目にサッポロクラシックを手にする。運んで良かった。先に登ってトイレを設営、ビールを冷やしてくれた森田さんと吉田さんに感謝。みんなで最高の乾杯。この夏1番の美味いビールをいただきました。吉田さんから「缶の潰し方教えたるわ」とええ感じの平たい重い岩を落としてのビールの缶の潰し方を伝授される。後から思うと私たちがたどり着くまでビールを飲み、缶を潰し続けていたのだからそりゃ上手いはずであると柳川さんと納得。この晩の食事担当は中嶋さん。カレーの具にしめじが入っていてめっちゃ美味しかった。具について尋ねるとペミカンというラードを使用した保存食のことを言うらしい。毎回学ぶことが多い。ちなみに山にいる間はずっとペリカンだと思っていた。この晩、吉田さんと森田さんのチンネ話と穂高のコンタクト事件を面白おかしく聞いて爆笑し全員集合で最高のお酒をいただいた。(この時点で、荷上げした27本のうち14本減っていた事には気づいてなかった)

8/12 夏合宿2日目 天気:曇り時々小雨
朝ご飯を食べていると吉田さんが何か歌を熱唱していた。気持ちよさそうで少し羨ましい。他の、メンバーは全く無視して黙々朝の準備をしている。こういうスタイルかと右に習う。
本日帰路に着く吉田さんとお別れし、八ツ峰 Ⅵ峰へ。

1本目: Cフェース 剣稜会ルート
熊の岩から八ツ峰6峰Cフェース基部へ。ツボ足で渡ったが朝の雪は表面が凍ってるところもあってやっぱり怖い。今回は1パーティ 小林さん 柳川さん2パーティ 中嶋さん 平野さん 鬼川 の順で登っていくことに。私は平野さんと交互にリード。今回私の小目標は中嶋さんを鬼軍曹化させずに登ること(夏合宿の岩トレではリードした時にロープのひきあげが遅くひどく叫ばせてしまったため)、ランニングと支点構築であたふたせず確実に丁寧にきめていくことであった。私は奇数ピッチのリードを選択。1P目リード。緩いスラブから始まるフェース、手がかりも多く快適。登りきって平野さんが登ってくるのを見てロープを引きながら、中嶋さんのロープも引き上げるように心掛けた。案の定中嶋さんは合図なく登ってきて「やっぱり」と遅れることなく、叫ばれることなく引き上げることに成功した。2P目平野さんリード 凹角をスタンスよく上がれるので気持ちよかった。ただポツリポツリ雨が落ちてきてるのが少し不安だった。3P目、結構雨が降ってきた。足場も濡れている。小林さんパーティが先を行っている間に今回初めて買ったハーケンを中嶋さんと平野さんに自慢する。「試しに使ってみようと中嶋さん。」「え!!!マジですか」と焦るが中嶋さんが優しく打ち込み方法と抜き方をレクチャーしてくれた。残念ながら音の変わる瞬間を聞くことはできなかった、しっかり打ち込んでいくと高い音に変わる瞬間があるらしい。やむ終えず使わないといけなくなった場面を少しだけ想定することができた。
4P目、長めのフェースで周りを見渡す余裕もあってめっちゃ楽しかった。ここであのナイフリッジが出てくると思いきや平野さんが早めにきる。この次がハイライトのナイフリッジとなり自分リードのチャンスがやってきた。この時から平野さんがほとんど黄色寄りの黄緑のロープを青登っていいよーと言い出した。青?ってこっちでいいのか、平野さんには青に見えるのか少し?となりがら、平日の岩トレでロープの色は共通の認識でないといけないと習ってるので、黄緑は青で行こうと自分に落とし込んだ。5P目 名物のナイフリッジリードで先に行ってる小林さんが写真を撮ってくれた。スタンスも手掛かりもしっかりしているので、少し気持ちにも余裕があって凄く楽しみながら登れた。高度感満点のキレたったナイフリッジからトラバースに入る間の真下、岩と岩の間にカラビナが沢山落ちていた。たまに背後を振り返ると長次郎の雪渓と熊の岩のテントたち。外に出るリッジは左奥を覗くとキレたって高度感があり少し足がすくむが、後は眺望が良すぎて最高の登攀であった。先行の小林さんと柳川さんのビレイステーションまで行くのは少し長かったのでトラバースする手前のピナクルで1度きった。6P目、最終ピッチ平野さんリードで登る。足場がしっかりしていて快適に登るとCフェースの頭に到着した。降りはチングルマが沢山咲いている安定したちょっとした台地になっていた。曇りで剱岳主峰側はガスっていたものの源次郎尾根から長次郎谷、Ⅵ峰の峰々を上から見下ろすことができた。

2本目:Aフェース なんちゃって魚津高ルート
中嶋さんは、この日Cフェースのみで終了するとのこと。
12:30 Ⅴ・Ⅵのコルまで降りて、少し長次郎谷へトラバースしたところがAフェースの取付き(らしい)。みんなでトポを確認しながら1Pの“凹角を登りハング下は右上カンテ”を探す。中嶋さんはルート経験者でありしきりに「ここでおうてるやんなぁ?」と八ツ峰初の私に同意を求めてくる。私もなんとか自分も役に立とうと一緒に見比べるが、ここが取付きなのであればなんとなく、凹角に見えるし頭もハングに見えると言い聞かせ「そうですね。ここしかないですね」と相槌を打つ。今回も最初に小林さん柳川さんPが小林さんリードで登っていく。登り初めて10メートルくらいで小林さんが「怖い。岩が動く」と言う。私は初めて小林さんの「怖い」を聞いた。さらにビレイしている柳川さんは「怖い?(だと?)」っと表情を思い切り歪ませている。ハーケンはところどころ打ってありそうであるがランニングが取りにくそう。時間をかけて小林さんが丁寧に登っていき姿が見えなくなった頃に「%$&*#@―」とコールが聞こえた。遠くてちゃんと聞き取れない。下にいる我らはそれがビレイ解除コールと認識し次に柳川さんが次に登って行った。(後から小林さんに聞くと「ルート違うから登ってこないで」のコールだったらしい。)柳川さんも登っている途中「ここコケ、コケ、コケ、滑ります。岩動きます」と何回もコケと叫びながら登って行った。その間中嶋さんはみんなが怖がりながら登っていくことに不安を感じたのか、Aフェースの基部下でウロウロしたりして取付きに間違いがないか、何度もいろんなルートを確認していた。中嶋さんのその行動を見て私はいささか不安になった事はその時伝えることが出来るわけもなく、平野さんと私の登攀を開始した。1P目、平野さんは小林さんと反対側のハングを避け、リッジ方向へ登って行った。すると「鬼ちゃん、これ動くで。絶対あかんで、何回もいうけど、この岩やで!!あかんぞ!!」といつも紳士で優しい平野さんが声を荒げている。私は唾をのみ中嶋さんへ「みんな怖いって言ってるんで、私登るまで見ててください」とお願いした。「おう。わかった」と中嶋さんが優しい。登り始めてから先に上がった先輩たちの言葉がそのまま襲いかかってくる。苔で滑る凹角に絶対掴みたい1枚岩がぐらぐらで足も手もなく動く岩を股に挟んでスルー、ステミングで上がるしかない。本当に怖かった。触る岩がボロボロ剥がれるのでじわじわ荷重しながら確認し進んだ。その後も足場は悪くハイマツの中に足場を弄りながら登っていく。リードじゃなくて良かったと思ってしまった。手がかりのないピッチでハイマツに見たことのないプロテクションが取られていた。イワシ結びというらしい。ようやく登りきって「これはルートじゃないかもな」と話す。2P目リード。1P目が長すぎたのかすぐに小林さんパーティに会えた。神経を使いすぎて、疲れきってある意味言葉が出なかった。その後少し降ったところの懸垂ポイントから、5・6のコルに降りる。この懸垂はロープの流れが良く懸垂の苦手な私でも気持ちよく降りることができた。ただ降りた後のガレ場にて、シュルンドが大きく崩れ爆発音みたいな音と共に目の前で崩れた。その姿を目の前に残雪の迫力と恐怖感を感じた。熊の岩に17時頃到着。森田さんに「変なところ登ってたなぁ」と言われ、魚津高ルートでなかったことを知る。正直ヘトヘトになり「疲れた」を連呼していた。ふと、森田さん作のトイレ方向をみると後立山方面には虹がかかっていた。晩の反省会では森田さんが「よし、明日ホンマの取り付きまで連れて行ってやろう」と言う。みんなで次の日のリベンジを誓った。中嶋さんは心なしか小さく見えた。

8/13 合宿3日目 天気:晴れ
Aフェース 魚津高ルート
森田さん先導にて取り付きまで行く。Aフェースの基部下端の岩小屋(ネコが入れる程度)の少し右上に申し分のない取り付きがあった。1P目 昨日より傾斜は強い印象。出だしが難しく感じたが丁寧に登ると上がれる凹角ラインを登る。途中カンテに差し掛かると少し外に出て明く高度感を感じるが気持ちいい。何よりスタンスよく登れるので快適。2P目、リード。天気が良いので青空の下、岩を登っている自分が嬉しくて少し有頂天になりながらリードする。クラックに入った時にまた少し難しく感じたが、リードは絶対落ちたらだめなので丁寧に確実に登っていくを楽しむことができテンションが上がった。これがリードの楽しさなんだと初めて感じた。3P目、柳川さんが登っていくラインと反対方向を平野さんに伝えてしまい、前日と同じようなハイマツの中を弄る登攀となったが全く問題なし。コースタイム通り2時間かからず全員がAフェース頭まで到着することができた。前日のなんちゃって魚津高を経て登攀できたからかめちゃくちゃ清々しい気持ちでスッキリした。この順番で良かったと、なんだか変に満足した。昼前には熊の岩に戻り宴会。次の日のチンネに向けて身体の休息という名の大宴会となった。2日間のⅥ峰の出来事とクオリティの高いおつまみでお酒は進みあっという間に時間は過ぎた。予報もはずれ、天気も良く熊の岩で過ごすこのゆっくりとした時間が本当に贅沢であった。

8/14 夏合宿4日目 天気:曇り〜雨
チンネ中央チムニー(取付きまでで撤退)
4:00起床 外を見ると雲の隙間から青空がのぞいているが遠くに暗雲が敷き詰められており、予報通り昼から天気は崩れるのではないかオーラを醸し出している。ここで柳川さんは次の日仕事なので帰阪。私は近くに柳川さんがいないと寂しいというか不安。5:20 スタート。長次郎雪渓を右俣に登り上げていく。劔沢での案内では右俣を八ツ峰側に通行可となっていたが実際は大きく雪が切れていてとても降りて通行できない。なるべく雪渓がつながっているところを探しながら、かつ比較的、割れ目の高さが低いクレバスを降りて登る。雪と雪の割れ目に立つという初めての経験にこっそり興奮しながら登り6:18 池ノ谷乗越へ到着。このV字から見えた小窓尾根?がめっちゃ綺麗で剱岳山域の険しさと美しさを感じた。この時はまだ富山側は青空も見えていた。長次郎を振り返ると色の濃いグレーの雲が増えていて少し焦りを感じる。池ノ谷ガリーを落石に気をつけながら降りるも浮石だらけ。6:53 三ノ窓へ到着。チンネがドーンと三ノ窓の雪渓に聳え立つ。大岩壁だ。左稜線が空に向かってギザギザとかっこいい。快適そうなテン場で登攀準備をする。この時はまだ薄い水色とグレーの間くらいの空でチンネ左稜線には3〜4パーティが登攀しているのがスッキリと見えた。そこから我らは雪渓をツボ足で横断し中央チムニー取付きへ向かう。途中雪渓で2回ほど滑って3mほど滑落した。蹴り込み不足と足の置き方のバランスが良くない上にピッケルの使い方がまだまだで自分の甘さに反省が残った。自信がないのならちゃんとアイゼンをつけるべきであった。中央バンドを目印にルンゼ側へ登る。がここも足場は決してよくない。そしてようやく取り付きについた頃、三ノ窓雪渓よりガスがモクモクと。いっきに視界4m程度となった。さらに追い討ちをかけるようにポツポツ雨が降ってくる。やっと取り付いたのに。。。小林さんと中嶋さん相談の結果、今回はここで撤退。電波を拾いながら天気を確かめるが良くなる予報はなく、甘く見積もっても昼まで曇り時々小雨という予報。「どうせなら気持よく登らせてあげたい」と先輩方。私としてはここまで来ることができたことで十分なスキルアップ。充実の山行であったがチンネに挑戦したと言いたかった悔しさもある。チンネにお預けはくらったものの、来年は取り付きまで自信持って来れるようにしたいと思えた。安全に山行を終えることができたと先輩方の決断に感謝。熊の岩への帰路、池ノ谷ガリーを弱音を吐かず登る自信がなかったので山と今回の合宿にちなんだワード縛りのしりとりを持ちかけた。平野さんは何度となく最後に「ん」をつけるワードを口にしそうになっている。中嶋さんは冷静に山の専門用語を、小林さんは意外に食べ物やお酒のワードが多い。そんなこんなで結構、楽に池ノ谷乗越まで辿り着けた。長次郎の降りは緊張感と神経を使うのでしりとりは休憩。急な雪渓を後ろ向きに降りるのが怖かった。小林さんに股から覗きながらアイゼンの前爪をきかせて降りる方法を教えてもらった。おかげで途中少し怖さは和らいだ。お昼前には熊の岩へ戻り昼から残りのお酒をあけることにする。ここで森田さんおすすめの雨の日スカタンゲーム。ルール説明を受けいざ開始するが森田さん、よ、弱過ぎる。結局森田さんのストレート負けで1時間持たなかった。その間に雨が降り始めあっという間にザザ降りに。次の日の下山を決める。時間もあるので次に帰りのソフトクリームをかけて、池ノ谷のしりとりの続きをすることに。これがかなり面白かった。ここでも森田さんの珍回答に、小林さんが「もうごまめだから何言ってもいいや」とあっさり森田さんはごまめと化した。このしりとりにおいては平野さんも「マッターホルンって誰か言ったっけ?」など約2名しりとりが弱過ぎた。最終、中嶋さんが、言葉に詰まる森田さんに対して「もう楽になったら?」と負けを煽りたてるほど。お腹を抱えて何回も笑い、雨の中帰りの荷物を軽くするという理由で飲み続けた。隣テントのパティが左稜線から帰ってきたのは17時を過ぎたくらいだった。新人ながら何かの差に悔しさを少し感じて、早くもチンネのリベンジに行きたいと感じた。

8/15 合宿5日目 天気:大雨〜曇
雨脚は弱まることなく、テントを片付ける間も与えないほどであったが、時間だけがすぎていくのも何だかわびしいので、8時に意を決して外へ。雨の中テントを片付けそそくさと帰り支度をする。無言でひたすら長次郎を降り、劔沢を登った。劔御前小屋では雨が止み始め、小林さんが急に爆食いを始めた。お菓子や魚肉ソーセージをビックリするほど次々に出していている。少し横目に見ていたがその後雷鳥沢からみくりが池にかけて快調に登っていくのを見てこのためだったのかと納得する。一方私は完全にシャリバテ状態。階段がしんどすぎて5歩行っては休むを繰り返し弱音を吐きまくっていた。あの爆食いは真似するべきだったとまたまた体にメモをした。雷鳥沢キャンプ場から室堂までは食べ物縛りのしりとりで上がった。森田さんと平野さんの珍回答は永遠に続く。結局しりとりはパスを使い続けた平野さんの負け。平野さんは最後、走って室堂へゴール、しりとりは弱いが足は強い超人でした。

感想
初めての合宿に初めての熊の岩。夏合宿にふさわしい劔の奥深いところで最高の時間を過ごすことができた。正直天気予報はそもそも良くなかったので、ちゃんと登れるか不安だった。しかし行ってみると思ってた以上に青空を見ることができ何よりⅥ峰Cフェース、Aフェース共にリードすることができたことが嬉しかった。特に思いがけない経験が印象的でなんちゃって魚津高ルートの怖かった場面が強く目に焼き付いている。多分一生忘れない。熊の岩に行ってさらに登りたいルート、挑戦したい岩が増えて頭の中はさらに忙しくなった。またすぐに熊の岩に行きたいと思う。チンネ取り付きまでは、雪渓の状態や天気など、現場に着いたその時その瞬間の状態でどう登るかの判断をすることの重要性を思い知らされた。実際、劔沢小屋での情報より雪解けは進んでおり、池ノ谷までの雪渓のルートはまるでその前情報は役に立たなかった。一緒に登るメンバーで、雪質や状態を確認しルーファイしていく面白さも感じることができた。個人としては天気を読む力、雪渓歩きの基本、ピッケルワーク、登攀道具のパッキングの方法に課題が残る。今回、たくさんの事にチャレンジでき充実した夏合宿となった事、何よりお腹が痛くなるほど大笑いしながら最高な時間を過ごせたことに感謝でいっぱいです。来年はもっとメンバーの一員として役に立てるように経験値を上げて挑みたい。

記録/鬼川
写真