20230217

2023/2/17-2/18 八ヶ岳 赤岳主稜 メンバー/小林 鬼川

山域
赤岳主稜
日程
2023年2月17日 - 2023年2月18日
メンバー
小林 鬼川
コースタイム
 
感想
1月、ほぼ土日の休みがなく、11月からあまり山行に行けてなかった私に2月は思いがけない連休があり即小林さんに連絡。八ヶ岳、赤岳に行きたいと要望する。すぐに「赤岳主稜に行きましょう」と返事をくれた。前週、大山で積雪期登山を経験しさらに楽しみが増した赤岳主稜。楽しみを前に、前のめりな私を察してくれてか、小林さんは夜勤明けの私に「ゆっくりの出発でいいからね」とやたら言ってくれた。天気予報は初日晴れ、翌日も午前はなんとか持つもののどんどん崩れる予報。私は事前に自分なりにコースタイムを調べ、天気が下り坂であること、さらには土日の混雑も予想されたのでできるのであれば初日に少しでもいいから取り付きに近づきたいと考えていた。そんな、焦る気持ちを抑えるかのように、明日早くに出たらいいから今日美味しいご飯食べて早くに寝ようと気持ちを落ち着かせてくれた。夜勤明けにゆっくりお風呂に入って出発。行きしにデコポンやカヌレを食べ途中買い食いもしながら楽しいドライブ。諏訪湖を超えると八ヶ岳の裾に陽があたって穏やかで綺麗でテンションが上がった。16時頃赤岳山荘駐車場へ到着。早めの晩ご飯と美味しいお酒を頂き21時には就寝。

翌日3時に起床、3時50分に赤岳山荘駐車場を出発した。ここからの林道は4輪駆動車であれば赤岳山荘まで行けることもあり雪の轍が高いイメージであったが今年は雪不足なのかそれほど雪はない。凍ってはいるものの普通の山の車道化しており私のエブリちゃんでも通れたのではないかと思わすほどであった。いくつかエスケープしながら4:50美濃戸山荘、北沢ルートを経て赤岳鉱泉、行者小屋を目指した。途中大同心を眺めながら小林さんは「雪がない、真っ黒だ」と言い2月の八ヶ岳の様子がいつもと違うことを教えてくれた。6:50赤岳鉱泉で軽く休憩。7:40行者小屋に到着。行者小屋は営業しておりたくさんの登山者が各々準備をしていた。小屋の正面に綺麗に整地された場所を迷わず頂きテント設営。混雑を覚悟し、すぐに登攀準備をして取り付きへ向かった。文三郎尾根にはそこそこの人が居て傾斜のキツイ場所では一般登山道でもロープを出して登っている人もいるほどであった。いつものごとく小林さんは次々先行者を抜かし取り付きの分岐点へ。有名なチョックストーンは遠くから見てもわかりやすい。下の取り付きに行くまでのトラバースが半ば傾斜きく、うすくのった雪の下に岩肌が見えてなんとも怖い。小林さんは簡単に辿り着いている。私はへっぴり腰で後に続いた。3時に起きた甲斐があり、なんと主稜取り付きに着いた時には我らが先頭。後ろからは次々と後続パーティがやってくる。前日入りしていた人より早くに取り付ける優越感に浸りながら9:30登攀開始した。

1P チョックストーン セカンド
“ピッケルが効く”をまだ実感できていない私はこのピッチにかなりビビっていた。左にお助けロープ的なものがぶら下がっている。初心者の私にとっては安定剤のようなロープであるが使う選択肢はないつもりで挑む。小林さんはアックスを効かしテンポ良く登っていく。無線でビレイ解除のコール。今回は北岳の時と違って無線の音がよく通りあまりお互いに叫ぶことなくコールできた。さて登ろうと岩に手をかけた瞬間、後続パーティに「前の子落ちるかもしれないから離れといた方良いよ」と言う話し声が聞こえた。初心者の私でも少しプライドが傷ついた。少し振り返ってきりっと睨みつけ気合を入れ直したいところであったがここは自分の身の程との戦い。落ち着いて登ろうと深呼吸した。上りはじめはちゃんと足元に雪があり蓬莱峡で見るくらいのアイゼンの後、いわゆる顕著な足の置き場までのステップは楽勝。私は小林さんの登りを見様見真似でピッケルを奥に刺し両側岸壁に足を張って登り上げることができた。思っていた以上に落ち着いて進めたのは後続に登れないと思われたくなかったから気合いが入ったからなのかと思うと、後続の発言も少し許せた。

2P 左上し階段状の岩場 リード
左上してくがチョックストーンを迂回し右のルンゼからやってきた3人パーティが前にやってきた。簡単に言うとチョックストーンを迂回し抜かされた。岸壁を左に巻いて緩いリッジ上にロープを進める。わかりやすい終了点がありそこで支点をきった。おそらく30mくらいだったと思う。上りは難しくない岩場であった。

3P・4P  雪と岩場のミックス
ほぼ歩きであったが風が強いのと大事をとってロープを張り、つるべでピッチを進める。雪が降るというより、岩に乗った雪が吹き上がり顔に刺さる。自分のリードでロープを目一杯伸ばそうと進むが支点構築しようと目指していた木の手前でロープ残り5mと無線にコールがはいる。「やばっ。支点ないやん」周りを見渡すが何もない。少し戻って反対側左の岩陵体へ、そこで大山で経験した雪をのけて支点を探すを思いだし岩肌の雪をかきわけた。するといい感じのピナクルを2個発見。助かった。

5P セカンド
上部の岩場の取り付きまでロープを目一杯伸ばしてもらい到着。ここに着いた時が一番風が強く感じ後ろに見えていた阿弥陀の山頂も風と雪で見えなくなっていた。

6P 中段の岩壁
フリーとコンテで迂回しながら登っているパーティに追いつき、ガイド付きであろう3人パティが少し行き詰まっている。最後尾の女性に「女性2人で登れるのですね。どこかの山岳会ですか?」など聞かれ「大阪です」だけ答え話を濁す。いろいろ質問攻めに合うが、風もどんどん強くなる中、なかなか前に進まないので、ビレイヤーを待たせてはいけないと、細かくハーケンが打ってある方へランニングを伸ばし追い越そうと試みる。がこれが失敗。私の技量ではそんなことはできるはずなく、少し待って前パーティの後を追う。下手に手を出したランニングによってロープは屈曲し引き上げに苦渋し反省。

7P セカンド
上部岸壁の手前にはほぼ雪稜。半分埋まっているがフィックスロープが垂らされている。上部の岸壁の取り付きはわかりやすい視点で快適だった。

8P リード
個人的にはこのピッチが難しかった。最初の上りはじめを右に上がるがなんかバランスが悪く感じ高度感もあって出だしに少しおろおろ時間がかかった。後から聞くと後少しでも時間がかかったら指導が入るところだったらしい。(セーフ。。。多分)。ルンゼ上からリッジに入るまでがどのピッチも難しく感じる。リッジに出てしまえば雪と岩のミックスで視点探しといった感じ。上部は支点の取りやすいピナクルがありピッチを切るのに難しさは感じなかった。

9P 小さなルンゼとリッジの繰り返し
「最後その辺で終わりなはず」と小林さんの言葉通り30mくらい歩くと頂上稜線、一般道の鎖が見えた。時間を見るとまだ昼になってない。ただどんどん風は強い。ロープをしまい赤岳山荘横で風を回避しながら休憩、空腹を癒した。

12:03 赤岳山頂 眺望は残念ながらゼロ。ほぼ真っ白で視界は良くて5m。それでも達成感は半端なかった。帰りも文三郎尾根から下る。
13:15 行者小屋テント場
テント場手前の水場で水を確保しようとパイプ越しを辿るが完全に凍っている。ただ耳を澄ますとチョロチョロっと音がする。2人してピッケルで氷をカンカン割る。はたから見るとかなり暴力的。結局そのちょろちょろの音にたどり着けず水作りを覚悟しテントに戻った。行者小屋の入り口にテント場用の飲み水が準備されていてとても助かった。この日は行者小屋の中もたくさん人がいて賑やか。そして我らも早々乾杯する。シチューとバケットに白ワインを添えて早い晩御飯と乾杯。最高の反省会を早々開催した。小林さんの2日目に早く出よう作戦が功を奏して、早上がりの登頂とテント場まで帰りつくことができ余裕が持てる1日となった。

2日目
起きたら重たい湿った雪。雨よりの雪で視界もほぼホワイトアウト。阿弥陀西陵は諦め下山の判断。南沢を降っていく。がまたこれがまた氷だらけ。結局赤岳山荘にたどり着くまで気を抜くことはできず、滑って転けて、コーヒー牛乳みたいな水たまりにハマったりで、散々だった。来年同じところを降るのならチェーンスパイクを買おう。


感想
八ヶ岳は入会するきっかけとなった山でもあり自分の登山技術にも限界を感じた山だった。と同時にもっと雪山に挑戦したいと思った場所でもある。今回、そんな赤岳主稜に挑戦できた。自分の中で恐怖の核心部であったチョックストーンを乗っ越せた時はただただ嬉しかった。平日アイトレに付き合ってくれた森田さんにも本当感謝である。前日の予報より天気の崩れは早く、風が強かったので岩と岩から滝のように落ちてくる雪と、積もっている雪の噴き上げが少し怖かった。それでも小林さんに「このくらいがアルパインっぽくていいよ。」と言われた時は、なぜか少しワクワクした。今回、初心者の自分にとって、より安全に確実に登攀するためにも全行程において細かいピッチでもロープを出してもらった。おそらく視界がよく足場も安定していたらコンテでも進めることができたピッチはあったと思う。そしてまた、今回無線の調子も良く、風が強くても細かいコミュニケーションがストレスなく細かいコミュニケーションが取れたのもよかった。(もっと使い勝手の良い特定省電力を会で購入してもらえないかおねだりしようと思う)ただ、条件やメンバーの経験値でその進め方は変えていかないといけない。途中ソロや、フリー、迂回して登ってくる他のパーティに先をこされても、惑わされず丁寧につるべでピッチを進めることが大切と感じたし、やはりそれを判断してくれるリーダーがいることが強みになる。今回は自分達のペースを崩さない登攀方法を選んだくれたことが、テンポ良く2時間30分の登頂につながったのではないかと思う。残念ながら阿弥陀岳西陵は次の機会となったが、やっぱり次八ヶ岳に来るのなら縦走したいし、できれば中嶋さんの人助け話を現地で聞きたい。

鬼川
写真