20251228

2025/12/28-2026/1/1 北アルプス 硫黄尾根 メンバー/深美 薬師寺

山域
北アルプス 硫黄尾根
日程
2025年12月28日 - 2026年1月1日
メンバー
L:深美、記録:薬師寺
コースタイム
<移動>
21:30難波(夜行バス)

<1日目:28日・快晴>
05:30大町温泉郷(タクシー)→06:00葛ゲート
06:30葛ゲート発 → 07:00七倉山荘 → 08:50高瀬ダム → 10:50名無避難小屋 → 12:50湯俣吊橋(硫黄尾根取り付き)→ 15:30標高1915m(幕営)
CT:9時間30分

<2日目:29日・快晴>
07:15発 → 08:15硫黄岳ジャンダルムP1 → 10:30小次郎のコル → 12:10硫黄岳→ 13:10硫黄台地・雷鳥ルンゼ → 14:40南峰(幕営)
CT:7時間25分

<3日目:30日・荒天>
10:10発 → 赤岳ジャンダルム群P1~P8 → 14:00小次郎のコル(幕営)
CT:3時間50分

<4日目:31日・荒天>
07:00発 → 赤岳主峰群 → 白樺台地 → 13:00西鎌尾根手前(雪洞ビバーク)
CT:6時間

<5日目:1日・午前荒天→午後快晴>
07:00発 → 10:20千丈沢乗越 → 12:50槍平避難小屋 → 13:50滝谷避難小屋 → 16:40新穂高ロープウェイバス停
CT:9時間40分
詳細
硫黄尾根は派手な登攀はないが、湯俣側から槍ヶ岳方向を目指す静かで緊張感の続くルートである。行程の長さに対してエスケープルートがなく、天候と判断の質が、そのまま行動の可否に直結する尾根でもある。

今回の下見という立ち位置であった半年前の残雪期は、雪のつき方が悪く、岩稜帯を抜けるのに時間を有した。その点において厳冬期は、対応しやすいのではないか。一方で行動時の天候と雪深さによって日数が読みづらいというのが事前の心持ちであった。

行程計画としては、残雪期の手応え、先人の記録から5日+予備日2日。撤退の判断は遅くても硫黄岳(2日目幕営予定)となった。
とはいえ硫黄岳まで踏み込んだら、撤退はかなりハードとなるため、実際はもう少し早い段階での判断となるだろうという認識であった。

入山前の予報は、12/28〜30が好天、31日以降は降雪、その後寒波到来であり、好天3日以内に核心部を超えられない場合は撤退も視野に入れる柔軟な行動を前提とした。

半年前の残雪期の時も感じたが、個人的には長くて泥臭い山行はとても好きだ。


<1日目:28日・快晴>

スキーシーズンにより期間運行している難波発の夜行バスを利用し、大町温泉郷着。深美さんが予約してくれていたタクシーで葛ゲートへ。


ゲートでは入山確認のため常駐している方がおり、こうした山域でも人の目が行き届いていることにありがたさを感じる。タクシー運転手やゲートで得た情報から、先行パーティーの存在と予報より天候悪化が早そうなことを把握し、核心部通過までのペースを上げたいという判断となった。

仕事の都合上、日曜から行動開始となったため、すでに何パーティーか入山していた。以後確認できただけでも船窪?1(葛ゲートで遭遇)、北鎌2(名無避難小屋記録に記録あり1、湯俣で渡渉撤退中に遭遇1)硫黄1(西鎌で遭遇)、と思いのほか賑わい、トレースがついていた。

ここから高瀬ダムまでは厳冬期以外だとタクシーで行けるのだが、厳冬期は車両が通行できない。そのため、葛から高瀬ダムまでの9km2時間半が追加される。
雲ひとつない快晴の中、快適に湯俣を目指す。

高瀬ダムを過ぎ、名無避難小屋で休憩がてらに利用者の日記を読む。前日に北鎌に向かった利用者(N氏)がいるようだが、日記を読み返すと2回に1回の利用はN氏なのではないかという頻度でこの山域をソロで訪れているようだった。
「アプローチだけでも長すぎるため体に記憶の残っているうちは絶対に再訪したくない」と深美さんと愚痴っていたばかりに、変態的な心身の強さに驚愕する。

その後、北鎌を予定していた2人組とすれ違う。湯俣にて渡渉中に濡れてしまい撤退途中とのこと。

出発から6時間半の13時前に湯俣吊橋に到着。残雪、厳冬期問わず先人の記録では2回渡渉して尾根に取り付いている。北鎌・硫黄のトレースも渡渉方向に伸びている。ただ、水量も少ない訳ではないためリスクをとって渡渉するのは避けたい。深美Lの判断で渡渉せず尾根を左上し、渡渉後のルートにどうにか合流することとした。


尾根にのるまでの下部は1時間ほど細かいガレと激ヤブが続く、GWは半袖だったため藪で腕が傷だらけになったが、今回はハードシェルに穴が空いた。途中上方から見ていて気づいたのだが、記録で見かける渡渉して取り付くルートも、結局は明確なルートとなっている訳ではなく、生き当たりばったりでヤブを繋ぎながら崖を抜け尾根に向かうというものだと思われる。
それならば今回のように渡渉せず最初から尾根を直上するのがリスクが少なく良いと思う。


15時半ごろ、風の音ひとつない静かな場所で幕営。16時まで進む予定だったが私が疲れ切っており早めの幕営としてもらった。予定より進めたことで、明日の目標地を改めた。


<2日目:29日・快晴>

7時過ぎ出発。トレースがはっきり残っているため、林の中での踏み抜きも少なく、淡々と距離と標高を稼ぐ。硫黄岳ジャンダルムP3では、残雪期は2回の懸垂が必要だったが、前後5mくらいをクライムダウンし1回のみの懸垂で済んだ。後日も同様に大幅に懸垂の回数を減らすことができた。岩場の雪付きも良く、以降の岩稜も順調に進みそうで安心である。


この日の不安材料であった小次郎のコルから硫黄岳への登り返しも、先行パーティーのトレースが残っており、かつ直近の天候から雪がある程度締め固まっており順調に進んだ。


雷鳥ルンゼをトラバースし、14時半過ぎに南峰に到着。まだ時間はあるが風が強くなってきたことに加え、南峰以降は岩稜が続き半日ほど進まければ幕営できない。南峰手前の稜線を整地し幕営。


ラジオの天気予報では、明日長野中部は曇り(場所によっては雪)のち晴れとのこと。というか以降、どんなに荒れていても天気予報では「曇りのち晴れ」であった。


欲を言えば明日は、白樺台地(硫黄尾根端部)で幕営したいが、、、赤岳ジャンダルム(核心部)は巻くのか、直登するのかとルート取りが一番重要になるため、最低でもひとつ先のピークまで見通せる視界が必要である。

ここまでは計画より早く進めて順調だが、進んでいるがために引き返せない場所まできている。ここから天候が回復することがなくても、少しずつ尾根を抜けていく必要がある。明日は最低限の天候回復を待ったのち、核心部のみ超えて赤岳前(中山沢のコル)で幕営予定とした。


<3日目:30日・荒天>



深美Lトップのもと、次のピークのルートどりを考えながら、現在のピークの超え方を決め順調に進む、この日は終始トップを進んでくださり、頭が上がらない。時々悪いところが出てくるが、雪がついている分、残雪期のような岩の脆さは感じず安全?に超えれた。14時に小次郎のコルに到着し幕営、この時には風雪もだいぶ弱くなっていた。

ただラジオの電波は色々おかしく北海道の天気予報が流れていた。

悪天のなか、核心部を越えられたことで心理的な余裕が生まれ、現実的な下山の見通しが立った。明日は、午前中に赤岳主峰群を超え、午後に白樺台地、西鎌尾根、槍平避難小屋まで進んでたらいいなぁ〜と話しつつ、、現実的には白樺台地どまりの可能性もありということで就寝。


<4日目:31日・荒天>
夜、風がかなり強かった。ただ、朝は風雪が少し残っているのみで7時出発。昨日から風ばかり気になっていたが、そういえば雪もだいぶ積もってきている、幕営地のコルから赤岳1峰への登攀はふかふか雪のばんざいラッセルだった。冬山らしく楽しく登ったところで2峰あたりで寒過ぎて右手先の感覚がおかしくなってしまった。急いで暖めてたら感覚が戻ってきてホッとする。

昨日よりは緩やかだが、3峰、4峰と上り下りが多く早く白樺台地に出ないか待ち遠しくなってくる。主峰群を超えたあたりで深美Lのアイゼン紛失といったトラブルも発生した。

その後は、傾斜が緩くなり岩稜帯も抜け切ったとのことでワカンをつけるが、風雪が強く氷化しておりすぐアイゼンに戻した。というか、薬師寺はワカン使いが下手なのか、靴がデカすぎるのか、ワカンをうまく使えなかった。

12時に白樺台地付近に到着。このまま槍平までいけるかと思っていたが、気づけば風雪が増し、視界はゼロに近い状態となった。GPS上ではすでに尾根合流点にいるはずだが、雪庇のリスクを考え、無闇に動けなくなってしまった。

風向きが変わった時、一瞬10m前方に雪面から伸びる人工物が見えた。尾根の道標かと思い必死に近づくと、ゾンデ棒であった。声をかけてみるも人の返事はなく、風が強くこのまま停滞していると低体温症になるということで、深美Lの判断のもと西鎌の雪面、ゾンデ棒が刺さっているすぐ右横に雪洞を堀り、天候の回復をまち停滞することにした。

ガクガク震えながら雪を掘っているとゾンデ棒の横から、チンアナゴのようにもう一本ゾンデ棒が生えてきた。2日前に入山した先行パーティーが雪洞で停滞しているようだ、、踏み抜かなくてよかったと思いつつ、必死に掘った風が凌げるだけの窪みに入り小休止。窪みを拡張し、深美さんが丁寧にブロックを積み(薬師寺も積もうとしたが、崩してしまった。)3テンより広めの雪洞が出来上がった。ガスをつけようやく一息。13時半だが今日はもちろんここで停滞することに決める、今年最後のお宿は人生初めての雪洞泊となった。


時折隣のパーティーが雪洞壁面を削る音が聞こえる以外、自分達の発する音のほか何も聞こえず、地上の暴風が嘘のように感じられた。足も目一杯伸ばせるし、トイレも外に行かなくて良い、、、、、、快適だ。。例年は聞かないが、大晦日だから紅白を聞こうと思ったが、ラジオの電波が繋がらず断念、早めの19時に就寝した。


<5日目:1日・午前荒天→午後快晴>

目を覚まし体を起こすと顔面を天井にぶつけてしまった。先輩方がイグルーや雪洞は天井が下がってくるといっていたのはこの事かと思いつつ、雪を移動させ、横の広がりを犠牲に雪洞に高さを出していった。


7時、深美Lが天候確認のため入り口のブロックを崩し外を確認すると、隣のパーティーがちょうどアンザイレンで歩き始めていた、西鎌は常時風が強く雪庇が大きく発達しているためかだろうか、、、風雪はかなり強いが、視界はあるため行動はできそうだ。遅れながらもロープを繋ぎその後出発。空は少しづつ明るくなり、雪も降っていないが、爆風で休み休み手を暖めながら進まなければ寒さで指がダメになりそうだ。

気づけば快晴になり、長かった西鎌尾根の千丈沢乗越に到着。2つデポしている荷物が転がっていたが、先行の硫黄パーティーはピストンで槍山頂に向かったようだ。その後飛騨沢を下り、槍平を通過。途中、槍をピストンしていた硫黄パーティーにおい抜かされた。最後の最後に初めてお話しできた。まだまだ余力を残していそうだった、、恐ろしい。。ちなみに大阪の山岳会と伝えると、「蛍雪さんですか?」と聞かれた。違う。。


滝谷かっこいい、、数ヶ月前に深美さんとドームに登ったが、冬の滝谷もいつか来てみたい。

16時半に新穂高に到着、最終の髙山行きのバスに乗車、お正月というのに満車で乗車できない人もいたようだ。深美Lは西鎌で手が凍傷ぎみになってしまったため、念の為、高山の赤十字病院で診てもらった、大事に至らなかったようでホッとする。その後、深美Lに飛騨牛のしゃぶしゃぶをご馳走になり、祝杯をあげた。


【総評】
硫黄尾根は、派手な登攀はないが終始気の抜けないルートであった。アルパインとは何かがいまいちピンときていなかったが、今回の山行はアルパインだという間違いない実感と経験を得ることができた。
また、深美Lの冷静な判断力と総合的な強さに支えていただく山行であった。