2023年7月16日 小川山セレクション事故報告書

事故報告書(小川山セレクション)
【報告者】小林玉喜
【日時】2023年7月16日(日)
【概要】小川山セレクション6P目にて、リードしていた小林がグランドフォール
【詳細】
小川山セレクションを、奇数ピッチ:深美、偶数ピッチ:小林がリードを担当し、登攀していた。6P目のY字クラックは右ルート(5.7)、左ルート(5.9)*が選べる。クラックが苦手な為、自分がリードするなら右を選ぶつもりだったが、見ると左も登れそうに見えたので、左を選択する。カムは#0.3-4を1セット、#0.75-2を1セット持っていた(不明確)。6P目をリード時、全てのカムを持って行ったかは不明だが、#1-4はひとつずつのみだった。
ビレイヤーの深美さんは左の壁にあるペツル2つで支点を取っていた。出だしに♯0.75(不明確だが、小さめのサイズ)をセットし、右の壁を利用して一段上がったところで、フレークのアンダーに#4をセットした。ここから右ルートと分かれるが、左ルートを登る。そこから抜け口までクラックが続く。下から見るとハンドサイズのように見えたが、徐々に広がっていく。途中で#3をセット。上に行くほど、広がっていき、ハンドが効かないと感じ(実際は効いたのかもしれない)、足は右壁と左壁に置きながら、レイバック気味に登っていた。#2をセットしようとするが、クラックの幅が広くて効かない。この辺りで、リードは空身で登るはずが、ザックを背負っていることをビレイヤーに指摘される。ザックを下に降ろすほど安定しておらず、それほど重くないので、そのまま登ることにする。さらにもう少し登って、また、#2をセットするが、やはり広くて効かないので諦める。この時点でランナウトしていることに気付いていたが、下の#3にはもう届かないので、カムをずらすことも出来なかった。抜け口までもう少しだったので、このまま思い切って登ることにする。
抜け口、壁は寝てくるが、クラックはどんどん広がっていく。右手はパーミング状のクラックの縁、右足はたしかクラック内、左手・左足はスラブにペタッと置いている状態だったと思う。あと、1, 2歩で平らなところまで抜け切れるかというところで、おそらく足が抜けて、フォール。青い空が見えて、このままだと頭から落ちるな、なかなか止まらないな、とぼんやり思っていたら、左半身に衝撃を受けて止まった。ビレイ地点は傾斜の付いたテラスであり、ビレイヤーのすぐ斜め下辺りの斜面に着地していた。最後に打った#3で止まっており、そこから4-5mランナウトしたところでフォール、トータル10m以上落ちたと思う。(深美さん曰く、放物線上に落下したらしい。)左太もも付け根の側面と左肩に打撲、右ひじと左親指に擦り傷を負ったが、青あざ・擦り傷で済んだということは、テラスに直撃したわけではなく、ロープの伸びでぶつかったと考えられる。
登攀には問題無かったので、数分休んで、リードを深美さんに代わってもらい、セカンドで上まで抜けた。なお、深美さんは、途中で#4を回収、#3を少し上にずらしたが、念の為、抜け口手前で#4を無理やりセットした。サイズ的には#3がベストと思われる。
*:トポによって、右が5.6、左が5.8としているものもある

【問題点・反省点】
・クラックが苦手にも関わらず、登れると過信した。予定通り、易しい右ルートを登るべきだった。
・ランナウトに気付きながらも、テンションを掛けずに登り切りたく、突っ込んでしまった。
・クラックのサイズを早めに見極めて、#3をずらしながら登れば良かった。
・落ち着いてカムのサイズを見極めたり、セットしたりする余裕が無かった。(落ち着いて奥にセットする等すれば、#2でもきまったのかもしれない。)
・#3を二つ持って行けば良かった。(上手ならば一つでもいいのかもしれないが、上部で#3を2つ使っている記録もいくつかあった。)

【改善点】
・登り始める前に、どのカムをどこでセットするかを十分にイメージする。
・クラックは自らランニングをセットする為、セットのタイミングを誤ると容易にランナウトすることを肝に銘じる。
・ランナウトしていたら、よほどの自信が無い限り、突っ込むべきではない。カムが足りないと気付いたら、無理せず、早めにクライムダウンして違うカムをセットし上部用のカムを確保する、またはカムを上にずらしながら登る等する(ただし、上にずらす際に、落ちると危険なので、安定している場所に限る)。
・次、同ルートを登る際は、#3を二つ持って行く。

【参考画像】※以下サイトから転用
https://www.kojitusanso.jp/otonajoshi/tozan-report/detail/?fm=25075

Y字クラック(右ルートと左ルート)

Y字クラック左ルート

6P目抜け口を上から見たところ