2009年8月31日 白崩谷滑落事故報告書

白崩谷滑落事故報告書
大阪アルデ山岳会 中嶋宏幸

日時 8月29日(土) 13:00
場所 白崩谷 標高900m付近
メンバー 中嶋L 櫻井 田中(岳友)

概況
 29日7:30 大台ケ原駐車場より東の川を遡行する為に白崩谷下降に向けて出発する。本谷下降となり合計4回程の懸垂下降を繰り返し、大滝と支谷の分岐に12:30到着する。暫く下っていくと大岩の上部に着く。(写真参照)まず中嶋が空荷で大岩の下にある岩に移る。続いて田中が荷物を背負って下の岩に移ったが、岩の右側が切れ落ちていた為、約7m滑落する。ヘルメット・荷物があった為、多少岩からの衝撃を吸収できた様子である。意識はあったが、首・腰・両足が痛くまた感覚がなくそのまま現場に横になる。暫くして感覚が戻ってきた。どうやら首と腰と右足は打撲の様子。左足は打撲と深い打ち傷があり出血している。水で患部を洗い流した後、包帯とテーピングテープで止血する。沢の水が枯れていたが、動けなければその場でビバークしなければならなかった。何とか動ける様子なので少し上部の水が出ている所にビバーク適地があった。その場所でのビバークを決定する。(14:30)15:00頃から雨が降り出し、暗くなる18:00頃まで雨が続いた。もし、現場でビバークしていたら、現場が川になって往生していたと思うと上部にまでビバーク地点を上げて正解だった。一応4:00起床の6:00出発との予定とし、19:00に寝る。明日の朝の状態によって変わってくるが、この時点で選択肢は4つ。

① このまま予定通り東の川まで降りて遡行を続ける。
② 東の川まで降りて逆の池原にでる。
③ 白崩谷を登り大台ケ原駐車場に戻る。
④ 動けなければ一人もしくは二人で白崩谷を登り大台ケ原駐車場に戻り、救助を要請する。
①と②は標高900m地点でまだまだ下降しなければならないので無理と判断。明日の朝の状況で③か④を選択することとする。
30日6:00田中に確認すると何とか動けるとの事。田中の荷物を中嶋・櫻井が分担し、田中は空荷で駐車場に戻ることとする。(③を選択。)
本谷の大滝を左に見て、白崩谷の支谷をまっすぐ上に登る。たいした悪場もなくスムーズに駐車場に戻ることが出来た。(11:30)


反省
① 中嶋が空荷でやっと下降した所を安全確認もせず岳友を下降させた。(ルートファインディングと状況判断のミス)
② グレードだけでは判断出来ないが、よく登られている谷だとは言え岳友を3級の谷に連れて行くのには無理があった。

良かった事
① 意識がありかつ重症ではなかった。
② ヘルメットとザックが岩からの衝撃を和らげた。
③ 三人パーティーであった為、介助や荷物の重さが軽減された。
④ 少しでも動けた為、ビバーク適地で泊まれた。
⑤ 結果的にエスケープルートが容易であったため撤退の労力がかなり軽減された。

7mも岩場を滑落したわりには幸いなことに結果的に軽症であった。もし、大事に至っていたら岳友をはじめ親族・山岳関係者に多大なご迷惑をかけていたと思うと非常に申し訳なく思っています。今回は事故にも関わらず不幸中の幸いといいますか、ラッキーなことが多かったように思います。今後、山岳関係者以外と山行する場合、山行場所はもちろんのこと山行中の行動に関してもいつも以上に他者に関して注意をしていきたいと思います。

以上

上部岩左より下の岩に下りたところ、写真向かって左側の切れ落ちた向こう側へ約7m滑落した。