2012年7月29日 大峰前鬼川山行報告

大峰 前鬼川 山行報告(反省文)

2012年7月29日
大峰 前鬼川
メンバー/中嶋L 松原 岳友T(敬称略)

今回の山行は遭難一歩手前といった山行となりました。多くの反省点としての課題があがりました。私のルートミスが最大のポイントですが、色々な要素が加わって遭難につながっていくという経験にもなりました。恥ずかしながら私自身の反省を踏まえて記録に残しておきたいと思います。また、この反省文が他の人の今後の山行の参考になれば幸いです。

5:30駐車場より入渓する。噂通りの素晴らしい沢である。沢自体の難しさはあまりないが安全のため所々でザイルを出して歩いてゆく。7時半ごろ三重滝の登山道にあたり500m登山道を歩いて三重滝を見に行く。沢に戻ってしばらく行くと757mの二股に出会う。その左の沢を上がる。ここまではなんの問題もなかったが次の860mの二股で枝谷に入る予定がルートミスを犯してしまい結果的に空鉢谷の方に入ってしまった。 11時ごろ860m地点で休憩した時、岳友Tが疲れたのか少しの間眠っていた。松原がGPSで予定よりも右に入っていると報告を受けたが手前正面に顕著な二股があったのであれだろうと聞き流して進んだ。

12:10トポにある1100mらしき地点に出たので左の尾根を目指してつめ登る判断をした。ここからは水は取れない。尾根上に出ると下山道が確認出来ると思ったがそれらしき所はない。GPSで確認しこの時初めてルートミスに気がついた。もっと早くに左の枝谷に上がらなければいけなかったのだ。暫く休憩して、来た道を帰るかこのまま登り続けて釈迦ヶ岳(1799m)に登るかであったが、沢を下るのは結構な下りであり滝や巻き道を幾つか越えてきた為、時間がかかると判断して釈迦ヶ岳に登ることとした。

この登りからTが遅れだした。私と松原は先行するもTとはぐれない様に所々で松原の笛とTの笛でお互いの居場所を確認しながら登った。(中嶋は笛を忘れた。)この時点での一番の心配ごとは我々が本当に釈迦ヶ岳の頂上に着けるのかということであった。と言うのも地形図では釈迦ヶ岳のすぐ下部は岩場マークだらけで崖の様子であったからだ。

3時間原登山を続け15時山頂に到着した。かなりTは疲れている様子であったが、なんとか一般登山道に出ることが出来たので、私自身この時あとはこの道を下れば駐車場に戻れると安堵していた。(このあとTは休憩毎に眠るようになる。)

一般登山道を松原・中嶋で先に下る。Tを二人の間にと思ったがTが「後から行く方が気持ち楽だから」と最後から歩く。30分下った所で休憩しTを約30待つ。また30分下った所の分岐で休憩しTを約30分待つ。今度は1時間下った所でTを約1時間待つ。Tは私たちと合流したがかなり疲れている。ここから松原がTの荷物をすべて背負う。時間も19時なのでTにヘッドランプを出すように指示したが、ヘットランプを車に置いてきたと言う。(今回登り始める前にレインウエアは置いていていいかと私にTが訪ねた。当然持っていくように指示した。その時レインウエアとヘッドランプは山の持ち物として常識だと確認しようとしたがそれくらいは分かっているだろうと思って言うのを止めた。)

仕方がないので私のヘッドランプをTに渡してあと1ピッチなので松原と先に下ろうと思ったが、かなりの疲れと暗闇では道迷いをすると判断して一緒に下ることとする。途中Tは「手足が痺れて動けない、ここで寝てゆく」と言いだした。(この時間からこの場所でビバークすれば間違いなく明日の朝までは帰れないし、下山の報告も出来ない。)松原が手足の痺れは脱水状態であると判断し自分のわずかな水をTにすべて飲ませた。(この時中嶋の水はもうなかった。)暫くすると、水のおかげでTの体力が少し回復した。暗闇になり谷沿いの道も分かりにくかったが、GPSのおかげで迷うことなく登山道を下山することができ20時に駐車場に戻ることが出来た。

以上


反省点
860mでのルートミス。きちっと確認するべきであった。もっと悪いことに、松原が注意したにも関わらずそのまま進んだ。
沢を離れる段階で水の補給を指示しなかった。
水筒が小さかった。
沢を下った方が結果的には下りで水も取れて良かったかもしれない。
Tの体力を把握できていなかった。
Tの脱水状態を把握できなかった。
ヘッドランプの携帯を指示しなかった。
笛を忘れた。
前鬼川は易しく気軽な沢だと心のすきがあった。

対策
分岐では慎重に判断し目視だけの判断には頼らない。素人連れで行くときは一度おとずれたことがありルートが確かなところに連れていくのが望ましい。
沢から離れる際の最終水場の判断は難しいが水が枯れてきた段階でこまめに水を補給する必要がある。(実際それからのつめに時間を費やす事は沢登りではよくある。)
水筒は最低1L以上必要。
結果論だがもう少し判断を慎重に下すべきだった。
事前に体力的な事を聞きだし判断する。
手足のしびれから体が動かないという症状はアルデのメンバーにでも以前あった。その時は脱水状態だと把握できなかったが、確かに水とアミノ酸を飲むと元気になった。こまめにメンバーの体調を把握し対処する必要がある。
アルデメンバーには必要ないと思うが素人には持ち物の確認が必ず必要である。
準備段階での持ち物の確認を怠らない。
どの山行にも言えることだが易しい山はないとの意識を持ち、山行に真摯に向き合い、常に最善の準備をする。

良かった点
GPSで常に自分たちの位置を確認出来た。
当初はTとの二人だけの計画だったが松原が参加することになった。
松原がTの脱水状態に気付いた。
Tを暗闇で一人下山させなかった。
笛でお互いの位置を確認出来た。

まとめ
 今回の山行に関してはリーダーである私の完全な落度であります。一緒に行動した松原さんとTさんには非常に不安で厳しい山行をさせた事に対して猛省しています。ほんとに申し訳ありませんでした。色々な事が重なりましたが、今思うとやはり易しい沢だとの思いが自分の心にすきを作ったのが最大の原因かと思います。常に山には真摯に向かっていたつもりでしたが、そうではなかったと気付かせてもらったのが今回の山行でした。今一度アルパインに関してきちっとしなければいけないと思っています。
 脱水状態でフラフラになりながらも下山してもらったTさん、GPSを持参し常に的確な行動をして支えて頂いた松原さんに感謝しています。これに懲りずにまた山行を重ねて行って頂けたら幸いです。すみませんでした。有難うございました。

中嶋宏幸