20220521

5/21-22 雪彦山(地蔵岳東陵・正面壁右カンテ) 無雪期アルパイン 西川 寺岡 柳川(記)

山域
雪彦山(地蔵岳東陵・正面壁右カンテ)
日程
2022年5月21日(土)~5月22日(日)
メンバー
西川 寺岡 柳川(記)
コースタイム
5/21(土)
6:30 大阪発
10:20 東陵登攀開始
13:20 地蔵岳登頂
16:10 バンガロー雪彦山着

5/22(日)
7:30 バンガロー雪彦山発
8:20 正面壁右カンテ登攀開始
11:35 地蔵岳登頂
14:30 大阪着
感想
5/21(土)
6:30集合。大阪からすぐに姫路に着いた。北アルプスへの遠征が続いていたので、あまりの近さに驚いてしまう。まずはスーパーで買い出しをして、賀野神社からもう少し上った場所から登山道に入る。夜から早朝にかけて少し雨が降ったようで山の空気が湿気を帯び、取り付きを探して上り下りするうちに今年一番の汗をかいた。取り付きは沢のチョックストーンを乗り越した場所だったが、いくつか行き方があるようだ。取り付きでベテランの顔見知りに出会う。彼にはこの1週間で駒形岩、ジム、そして雪彦と驚くほど偶然会っている。10時登攀開始。核心は4ピッチ目のチムニーという事前情報を得ていたので、遠慮なく奇数ピッチを行かせてもらう。1ピッチ目はポコポコとポケットのあるスラブ。外岩の本番は初めてなので緊張したが、ホールドもあるしフリクションも効いて特に難しいところはなかった。2ピッチ目は寺岡さんリードだが、物足りなかったかもしれない。3ピッチ目はリードで緩く左上するが、立木も多くロープが屈曲して重かった。予習で見覚えのあるチムニーに着いたのでここでピッチを切る。やはり核心は寺岡さんに行ってもらわないと。核心とされる4ピッチ目のチムニーは、出だしが少し迷うが一度体を外に出してしまえば快適に登れる。岩の隙間にゼンマイを見つけてちょっと嬉しい。5ピッチ目は少し歩いて馬の背をリードで登る。リッジだが階段状で登りやすい。予習通り遭難碑を見つけて登りきるが、ちょうどいい終了点を見つけられない。仕方なく立木で支点を作るが、向きが悪くロープの引き上げに苦心した。最終6ピッチ目寺岡さんリード。ホールドがやや細かくなって、チムニーよりも難しく感じた。登り終えると、寺岡さんが引き上げている場所は山頂直下というよりもほぼ地蔵岳山頂だった。突然山頂に出られて気持ちいいが、予想外だったので驚いた。
早々に登攀を終え、一般道にしては悪い道にぶつくさ文句を言いながら下山途中、取り付きを探すのに時間がかかった反省点を活かして、翌日登る正面壁右カンテの取り付きを確認する。PASがほしくなる道の悪さに耐えながら取り付きに着くと、フリーらしいクイックドローが点々とかかっている。しばらく岩を見上げて下山道に戻ると、右カンテを登っている2人組がいることに気づく。正確にはフリーの上昇気流5.11bのようだが、途中まで同じルートなので参考までに眺めさせてもらう。登攀を終えた気安さと、時間的にまだバンガローにチェックインできない状況が手伝って、展望岩からやいのやいのとはやし立てる。あとから気づいたが、右カンテルートから展望岩はよく見えるし声も聞こえるので、目障りだったに違いない。
まだまだ時間があるので雪彦温泉で汗を流してコンビニで酒を買い足して、17時頃から快適なバンガロー内で夕食(飲み)とする。その最中とあるハプニングが起きてしまい3人で必死に対応するが、私たちだけの力には限りがあり、寺岡さんのアイデアで窮地をしのいだ。余談だが、飲み始めてから局地的な豪雨となり、寺岡さんのパワーに感服することしきり。きっと砂漠や干ばつ地帯に行けば神と崇められるだろう。その能力のおかげか、バンガローでヒルに出くわしたが寺岡さんはまだヒルに吸われたことがないらしく、早く経験してみたほうがいいと思う。10時頃就寝。

5/22(日)
夜間の土砂降りは過ぎ去って、前日よりもいい天気になった。8時に前日と同じ舗装路からスタート。アプローチが悪いことを学んでいるので、フィックスロープにPASをかけられるよう最初からハーネスを履いておく。そのおかげで少し安心して取り付きに着いたが、おそらく緊張のせいでお腹がキリキリと痛む。予習によると、右カンテは東陵よりも難しい。特に最初が難しそうなので、1ピッチ目を寺岡さんに行ってもらう。まぁ余裕だろうと高をくくっていたら、登れる寺岡さんが焦り気味に「悪い」と連呼するのでビレイしている私の顔が引きつってしまう。ルートは3ピン目からトラバースしなければならないが、寺岡さんは直上してフリーのルートに迷い込みクライムダウンしていた。あとから聞くと、このクライムダウンが一番難しかったらしい。無事にクライムダウンした後は右に難なくトラバース。ビレイしていると、ロープの上を毛虫が這って近づいてきていることに気づいた。ロープを振って落としたが、しばらくして西川さんが「毛虫が足のそばにおるで」と言うので、びっくりして下を見ると足のすぐそばに毛虫が!どうしようと見ていると、ロープを出し損ねて上から「柳川さぁん!?」と怒気を含んだ声が落ちてきた。
いざ自分が登り始めると、逆層で確かに気持ち悪い。出だしは良かったが2ピン目を過ぎたあたりで持てる・立てるホールドがなくなってしまった。しびれを切らした西川さんが登ってきて近くでアドバイスしてくれるが、どうにも立てないし次の一手を出すことができない。そうこうしているうちに怖くなってきてA0しながらなんとか足を踏み出すが、まったく立てずにズルズルと滑ってしまう。西川さんに先に行ってもらおうか。でも自分が握っているクイックドローには西川さんのロープがかかっているから、回収されてしまうと困るな・・・そんなことを考えているときに事件は起こった。
「あ、落ちたな」と冷静に思ったが、どうもいつもの落ちたときとは様子が違う。瞬時に気づいたが、左のクライミングシューズが脱げていた。「靴が脱げた!」と言った時の西川さんの呆気にとられた表情が目に焼き付いている。そして脱げたシューズは岩肌で一度軽やかにバウンドして谷底へ・・・落ちなかった。奇跡的にアプローチの崖の手前10cmほどのところでコロンと止まった。どうしようと西川さんと顔を見合わせるが、幸か不幸か、まだ1ピッチ目で落とした靴は見えている。寺岡さんにロープを出すようお願いして、ゆっくりと取り付きまで下ろしてもらって拾うことにした。ちなみに、寺岡さんはトラバースした先の終了点にいるので、私が落ちたことはわかってもロープをどうして長い距離出さなければならないのかまったくわからないまま、数cmずつ緩めてくれた。後から知ったが、こういう場合は体重をかけてはいけなかったらしい(よく考えればわかることだが・・・)。下ろしてもらううちに少しずつ落ち着いてきて、靴を履いて再度登り始める。やはり2ピン目まではスムーズに登れるが、その先に進めない。西川さんの許しを得てスリングアブミで乗り切った。難しいところはそこだけで、トラバース(私のロープは右上していたので、正確にはトラバースではないが)も問題なかった。終了点に着き、寺岡さんに何が起きたのか、どうして下ろしてもらったのかを説明すると驚き呆れられた。すみません・・・私も何が起きたのかまだよくわかっていません。
2ピッチ目は階段から始まるカンテをリードする。もちろんリードするつもりだったが、先ほどのフォール(自身と靴)の衝撃が大きく、気が乗らないというよりも怖気づいていた。それを正直に言ったところで許されそうにないので、仕方なしに登り始める。出だしは問題ない。これぞカンテという岩角を登っていくと、途中立木や岩で屈曲してロープがとても重くなり、後ろに引っ張られるようになった。短くなるが立木でピッチを切ってもよかったのかもしれない。重くなったロープを引きずりながら登ると、左に上昇気流の終了点があるちょっとしたテラスに着く。テラスが快適でカンテを離れ左に行ってしまいそうになるが、それは右カンテルートではない。カンテには古いハーケンがあるが、直上も右の草付きも私には難しそうだ。ハーケンにPASをかけてフォールの動揺(まだ引きずっている)を収めたり、つかめそうな場所を探してしばしテラスとカンテを行ったり来たりする。下にいる2人からは現れたり隠れたりして見えていたようで、何度目かのテラスで西川さんに「左に行きすぎたらあかんで!」と注意される。そこで諦めて登ることにしたが、ありがたいことにおそらく一番登りやすい箇所だった。カンテ右に打たれた終了点でピッチを切る。
最終3ピッチ目は寺岡さんには易しすぎ・短すぎた。さっさと登り終えて歩きで2度目の地蔵岳に登頂。完全に余談だが、私たちのすぐ後に東陵から登ってきた人が寺岡さんに「あの子(私のこと)もクライマーなの?」と尋ねたらしい。ええ、そうです・・・自分が落ちるばかりか靴を落としたりしますが、大きな声では言えませんが、一応クライマーの端くれです・・・見えないでしょうが・・・。
相変わらず悪い下山道を下り、駐車した場所に戻る。ちょうど昼時で空腹だったが、大阪に戻って中嶋さんに紹介してもらった昼から飲める居酒屋で反省会を開催。毎度反省すべきことは多々あるが、今回に限れば唯一だろう。

クライミングシューズのベルクロはしっかり締める。
写真