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2023/12/29-2024/1/1 前穂高岳屛風岩東稜 メンバー/深美 杉橋

山域
前穂高岳屛風岩東稜
日程
2023年12月29日 - 2024年1月1日
メンバー
深美(L) 杉橋(記録)
コースタイム
2023年12月29日(金)
09:15:釜トンネル発
10:50:上高地
11:52:明神池
13:00:徳沢園
14:40:横尾避難小屋
15:20:渡渉取付偵察
16:00:横尾避難小屋(泊)

2023年12月30日(土)
06:50:横尾避難小屋発
09:00:T4尾根取付
12:00:T4尾根(2P終了:空身)
13:00:T4尾根取付(懸垂下降)
14:00:T4尾根(2P終了ユマーリング)
17:00:T4尾根頭

2023年12月31日(日)
停滞(天候不良のため)

2023年1月1日(月)
07:50:T4尾根頭発
09:45:T4尾根取付
11:20:横尾避難小屋
12:50:徳沢園
13:50:明神池
17:30:釜トンネル
19:03:平湯温泉行きバス乗車
感想
前穂高岳屛風岩東稜は、今回で3度目のチャレンジとなる。
昨今、各ルートではフリー化が進み既に屛風岩東稜も96年にオープンロードとしてフリー化となった現在、3度もチャレンジする魅力とは何か?
前穂高岳屛風岩東稜とは…
屛風岩のルート開拓は戦前の1931年に1ルンゼ沿いの登攀から東壁、中央壁、2ルンゼ、右岩壁、3ルンゼまで30以上のルートが開拓され、東稜は中央壁に位置する。
初登並びに冬季とも1961年に登攀されており、60年以上経った現在でも多くのクライマーに魅了されているルートの1つだ。
横尾山荘から涸沢へ向かう登山道から見える巨大な壁は誰しも目にしたことはあると思う。
無雪期は横尾山荘から1dayで取付きが可能だが、積雪期はその風貌を一掃させ冬壁となり、冬山バリエーションとして登攀したい気持ちに駆られ、此れまで2回のチャレンジでの経験を活かし、今回の登攀を迎えた。


2023年12月29日(金):晴れ
今回は、平湯温泉に駐車して濃飛バス(08:55発)を使用し中の湯下車にて釜トンネルから入山した。濃飛バスには既に多く人が乗車しており、平湯温泉からも上高地へ向かう登山客も乗車するので車内はほぼ満席状態で、しかも中の湯下車の人は荷物を抱えて乗車しなければならず、相当大変でした。
釜トンネル入口で長野県警から登山計画を聞かれた後、出発した。
釜トンネルは照明が点いており歩き易く、大正池へ向かう道も昨年より雪が少なかった感じがした。
上高地バスターミナル、明神池、徳沢園、横尾避難小屋までも雪が少なく一部は地面が現れるほどだったので、歩行時間もほぼ夏道時間と同じくらいで横尾避難小屋に到着できた。
途中、徳沢園から慶応尾根や奥又池へ架かる新村橋が建替えのため、前後に仮の橋が設置されていた。完成はR9年予定とのことでした。
計画ではT4尾根登攀に時間がかかると想定し、同日に取付付近までつめる予定でしたが、雪が少なく、それほど時間を要しないと判断し横尾避難小屋泊に変更した。
横尾避難小屋には、既にソロを含めて4組のパーティーがおり、既に宴会を始めている組もいた。個室は埋まっていたので、入口からすぐのスペースが空いていたので、荷物を置き渡渉ポイントの偵察に向かった。歩いて30分ほどで渡渉ポイントについたが、雪が少ないため川幅が昨年よりも広く感じた。
横尾避難小屋に戻ったら隣のパーティーが少しスペースを空けてくれたので、3テンを張り中で一休みをしてから夕食は食べた。初日の夕食の食担は深美さんで具たくさんの白湯鍋でした。食材肉や野菜、締めの麺まで歩荷してくれてありがとう。
18時頃にそれまで騒がしかった隣のパーティーが急に寝支度を始めたかと思ったら、寝息やイビキが聞こえてきたので、ラジオを聞きたかったがあまり聞けずに20時には就寝することにした。

2023年12月30日(土):晴れ
5時30分に起床し、各自朝食を済ませ6時50分に横尾避難小屋を出発した。30分ほどで昨日の渡渉ポイントにつき、川幅は広いが何とか渡渉を終えT4尾根の取付へ向かった。
T4尾根の取付までは交代しながらトレースを延ばしていき、昨年の経験も活かし間違わずにT4尾根に着けた。
T4尾根の取付に不要な装備(ワカン、ストックなど)をデポしたが、後であんなことになるとは思わなかった。
T4尾根の2Pをどう早く抜けるかが、T4尾根の頭に辿り着ける核心となるので、ここは予定通り、荷物は取付に置いて空身で2P登攀したあと懸垂で取付まで戻り、ユマーリングで2P終了点に戻る作戦でいくことにした。
1P目は杉橋が担当した。
以前も登攀したルートだが、今回は雪が少なく出だしや終了点近くが悪く感じたが、岩肌が見えているのでカムが有効的に使用でき、1P目終了点も埋もれていないので、掘り出さずに済んだ。
2P目は深美さんが担当した。
岩肌に付いた雪を払いながらルートを見極めていき、バイルを上手く使いながら登攀をしていった。残置のハーケンなどにランナーを取りながら、カムも使用し上部で右へ移動するいやらしい所も上手くかわしながら、難なく2P目を終了してしまった。流石としか言えない。この2P目の登攀がT4尾根頭に辿り着くキーポイントとなった。
2P目の終了点から懸垂下降で取付まで降り、ユマーリングをして戻ってきても14時だった。ここから雪稜を2P(深美/杉橋)登り、昨年のベース地点まで15:30には着け、ここから目指すT4尾根の頭は直ぐそこにあった。
残り1Pを杉橋が担当した。
無雪期には2度登攀した事があるが、積雪期は今回が初めてで、あまり状況も覚えていなかった。チムニーへ向かう雪稜を上がるが、支点が乏しく宝剣で教えてもらったイワシ結びを使いながら、チムニーへ入っていった。途中にクラックがあったので、カムを使用し更に上がるとスラブ面に残置のロープが見えた。この残置ロープを使えば上がれるが、信用が出来ないので左側の段へバイルなどを使って上がってみたが、何処もスラブ面でちょっと登れる気がしなかった。仕方がないので、下部にカムや残置ハーケンに支点を取り、残置ロープを使用して登った。
終了点から懸垂下降で取付に戻り、ユマーリングで登り返した。
T4尾根の頭に到着した頃には日が暮れていて、吹き溜まりを掘りテントを張るための整地を始めた。
翌日は天候不良のため停滞する予定なので、なるべく平に整地をするよう心掛け、18時にはテントに入ることができ、ほっとした。
テントの中は快適で3テンはザックも装備類も入れても余裕があり素晴らしかった。
2日目の夕食の食担は杉橋で、軽量化のためラーメン(塩)+餅と雑炊の予定だったが、雑炊は持ち越しとなった。
翌日の天気の荒れ具合が気になるのでラジオをつけるが、なかなか長野方面の電波を受信出来ず、ようやく入ったが予報通り天候不良になるので停滞を確認し、21時頃には就寝した。就寝してから雪が降り始め0時には壁側のテントには、かなりの雪が降り落ち外に出て雪払いをしてから、2時間ごとに同じ作業をするはめとなった。

2023年12月31日(日):風雪のち夜晴れ
昨夜からの雪は今朝も続き、テントには壁側から雪が降り積もる状態で一時は30分おきに雪払いをしなければならない状況だった。外は昨日と一変し冬山に戻りT2並びにT2へ続くトラバースにも大量の雪が降り積もっているのが分かった。
ラジオを聞きながらテント内で過ごす時間は、長く感じ1時間ごとの時報で時が過ぎるのを感じた。そんな中ふと自分の冬靴を見ると何か変な感じがした。ソールが剥がれていたそれも両足ともで、片方は酷くいつソールが無くなっていてもいい状況だった。
こんな状況では翌日は登攀が出来ないと思い、深美さんに翌日撤退のお願いをした。
天気が落ち着いたのは夜になってからで、雪、風が止み夜中には月も見えた。
3日目の夕食の食担は深美さんでカルボナーラを振舞ってくれ、味もいけていてスープパスタ的な感じだった。
ラジオからは、紅白歌合戦が聞こえ今年は知らない歌手が多く感じたが、今年もいよいよ最後だなと実感した。

2024年1月1日(月):晴れ
5時30分に起床し各自朝食を食べ、撤収の準備している頃に日の出が拝むことができた。
辺りを見ると、曇り一つ無い快晴で、撤退するのが心惜しい気持ちがあった。
T4尾根頭から取付まで3Pの懸垂下降が必要で、昨年は下降路で間違えた経験もあり、1ルンゼ側を目指して下降をした。昨夜まで降った雪のおかげで木々が隠れており、結び目のスタックも避けられた。次の懸垂下降で2P目の終了点に戻れるが、ここは間違え易く昨年間違えたルートへ行ってしまうので、今後は要注意の箇所だ。尚、後で取付から確認したが、間違ったルートでも2P懸垂で降りれることは可能みたいだが、できれば登り返して修正した方が良さそうな気がする。
T4尾根取付には2時間で戻ってこれ、デポした装備品を探したが見つからない。スタート地点の少し上の岩との窪地に置いておいたが、周辺をいくら探しても見つからなかった。ビニール袋に入れて置いたが、窪地が浅かったのと昨日の降雪などの影響で流されたに違いない。周辺を掘り起こしてもないので、探すのを止めて横尾避難小屋へ向かった。横尾避難小屋に11時20分に着いた。昨日のテント内で撤退が決まり、翌日は坂巻温泉の日帰り温泉を入っていこうと話していて、明神池で坂巻温泉へ電話で確認したところ、16時までしか入浴させてもらえない事がわかり、バスの時間までも大分あるので河童橋で穂高の山々を見ながら時間を過ごした。
16時頃に大正池あたりで、緊急地震速報のアラームがけたたましく鳴り響き、その後大きな揺れとともに焼岳方面から大きな崩れる音がした。
釜トンネルには17時30分に到着し、19時03分のバスに乗車し平湯温泉に到着した。
近くのひらゆの森で入浴して高山市内で夕食を食べて翌日の01時30分帰阪しました。

各自の感想:
良かった点(深美)
・過去の経験をもとにT4攻略に向けて戦略を立てて実行できたこと。
・個人的にはT4の2P目を落ち着いてリードできたこと。
 その後の雪稜のラッセルを楽しめたこと。
改善点(深美)
・荒天の時のテント設営について、雪洞、イグルーを駆使できるスキルを身につける。
・間違いやすいと注意された所でまんまと間違えて懸垂した。
 もっと慎重になるべき。

良かった点(杉橋)
・過去の経験を活かし空身、ユマーリング作戦でT4尾根を攻略できたこと。
・昨年より前進ができT4尾根頭に辿り着いたこと。
改善点(杉橋)
・冬靴使用10年は、事前にリソールをすること。
・装備品をデポする際には、場所と位置などを考慮すること。
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