2025/5/3-2025/5/5 2025年春合宿 メンバー/森田 中嶋 小林 梶井 星島 薬師寺 松吉
- 山域
- 剣岳・小窓尾根
- 日程
- 2025年5月3日 - 2025年5月5日
- メンバー
- 森田 中嶋 小林 梶井 星島 薬師寺 松吉
- コースタイム
- 5月3日
5:30 番場島発→11:00 1600m 休憩地点 → 14:00 2121m 幕営地
5月4日
7:30頃 幕営地発 → 15:30頃 幕営地 2650m
5月5日
5:30頃 幕営地発下山 → 10:00 番場島着
- 詳細
- 配車:森田号(森田・中嶋・小林・松吉) 梶井号(梶井・星島・薬師寺)
<5月3日 晴→曇 夕方から暴風雨>
1日目
番場島出発。
半年前に参加した冬合宿では、冬季の車両通行止めにより伊折~番場島3時間のアプローチを歩いたが。
GWよりゲートが開いている今回は車で番場島まで乗り入れができるため、アプローチは楽々だ。
3日午前4時、前夜着組と早朝着組が合流、5:30番場島発。
番場島からはアタック予定の「三ノ窓」が見える。

のっけから雪渓や藪を越えて進んでく。
とりつき後急登。

今回の合宿では共装をすべて薬師寺さんが負担してくれた。
後々明らかとなるが、薬師寺さんの負担が参加者全員に、「薬師寺さんがすべてを負担してくれているので」という意識をもたらし、非常に素晴らしい山行となった。
まさにOne for all all for oneだ。
初日は午前中晴天。
雪に日が反射して眩しく、のども渇く。水を持って来ていて正解だった。
薬師寺さんはコンデンスミルク持参、周辺の雪でかき氷を振舞ってくれる。

当初中嶋リーダーが先頭を担っていたが、途中より梶井さん・薬師寺さんが先頭、ほっしーさん、小林さんが中隊、中嶋さんがしんがりを担ってくれるようになる。
不思議なもので、自然と順番が決まってくる。
一番弱い私は必ず最後尾。「遅れずについていかねば」と終始焦る。
しかし、途中で疲れがでたり、技術が未熟で時間がかかったり、と大きく隊から外れてしまうことがあるのだが、そんな時は必ず中嶋さんが後ろからきて声をかけてくれる。
歩き方のコツを教えてくれたり、「焦らんと、安全に。」と安心させてくれたり。
その都度、心底ほっとして再び歩き出すことがでる。
これがアルデの懐の深さなのだろうな、と思う。
11:00 1600m付近休憩。早月尾根と小窓尾根の並走がよくわかる。
三ノ窓も見えており、小林さん、梶井さんが「来る途中にコンビニで手に入れた劔モチーフの手ぬぐい」と比べて説明してくれる。非常にわかりやすい。
別隊で早月尾根を登っている森田さんを探してみる。

14:00 2121m付近幕営。
今夜は荒れる予定なのでイグルー技術を応用し、雪を掘り下げ、周辺に雪を積み上げてテントを設営。
今回のメンバーは梶井さんを除いて全員がイグルー作成合宿の参加者だ。
学びって役立つ。
梶井さんは職業柄どの場面でも素晴らしい働きを見せてくれる。
食担はほっしーさん。最高に豪華な酒粕汁を作ってくれ、皆が大満足であった。
また、中嶋さんや小林さん・梶井さんが大量のお酒・あてを担いできてくれた。
皆が口々に「共装を薬師寺さんが担いでくれているので(豪華な食事・あて・お酒にした)」という。
すごい相乗効果だ。
夜間は激しい暴風雨にさらされる。


<5月4日 風 雪>
2日目
ニードル・マッチ箱を超える本日が核心。
しかし昨夜よりかなりの暴風、本日も天候不芳の予報だ。
中嶋さん、小林さんで様々なプランが練られる。
下山するか、行くか。
天候回復を待つ間、6時のNHKラジオでの「本日は天候回復傾向」の予報により、決行を決意。
しかし、予報とは裏腹に終始天候には恵まれず冷たい、風雪にさらされる中での山行となるのだった。

山行は、振り返ると楽しいのだが、渦中では恐怖の連続だ。
できるなら下山したい、という気持ちと、ここまで来たのだから行ってみたい、という気持ちが綯い交ぜになる。
決行、の判断がでるとそれまでの「下山かも~」という緩い空気が一変する。
ピリッとした中で出発の準備をする。
出発後すぐに垂直かと思われる雪の壁をアイゼンとピッケルで登っていく。
藪も多く、雪に押されてすべての木が下方向に生えており、まさに「行く手を阻む」かのごとくだ。
2カ所、懸垂でロープが出た。
先頭で梶井さん、薬師寺さんがロープを出してくれ、私と中嶋さんでロープを回収する。
ここで【恐怖のサラダボール事件】が発生する。
1度目の懸垂ポイントの後、素早くロープを回収し、捌く。
捌いたロープをまとめたのだが、「早くせねばならない」という気持ちが強く、捌いたロープをくくり止めずに中嶋さんのカバンの中に入れてしまったのだ。
二度目の懸垂ポイント、中嶋さんがカバンからロープを出した時にはロープがカバンの中で究極にこんがらがってしまっており、それをほどくのに20分ほど時間を要してしまう。
いつも優しい小林さんが劇的に怒っている。
「このサラダボール野郎が。」
これにはもう、反省しかない。

天候不良により視界が悪く、結局どこがドームでどこがピラミッドピークか、マッチ箱をいつ通過したのかわからないまま必死でくらいついていくのだが、先頭をとってくれる梶井さん、薬師寺さんは神がかった【迷いのない】ルーファイをしてくれる。
振り返れば、谷底まで滑り降りていきそうな急勾配をトレースし、降りかかってくる這松にザックを奪われながら進む。

朝の出発が大幅に後ろ倒しとなったため、予定していた三ノ窓に一歩届かず。
2600m付近で幕営。
本日の食担は私だ。
今回の食担はいつもに増して緊張している。
昨日のほっしーさんの食事がおいしすぎたというプレッシャーと、恐怖のサラダボール事件で皆の足を大きく引っ張ってしまい、さらに食事もまずい、という壊滅的な状況だけはなるだけ避けたい、との思いがあるからだ。
いつもは「軽さを優先」して選ぶ目メニューも、今回は共装がない分、たんぱく質を多く、を心がけて持ってきた。
結果はまずまずの食事を作ることができ、一安心だ。
本日の道程も厳しかった。
本当に怖い、と思う場所も多々あった。しかし、食事を終えてテントの外に出た瞬間、素晴らしい景色を見ることができた。
「ああ、だから山はやめられないんだ。」と、強く思う。


〈5月5日 晴天〉
3日目
待ちに待った晴天日。
しかし、予報は20m超の強風。
昨日の積み残しをカバーするため、本日決行なら12時間超の行動となる。
昨日の疲労もたまっている中での長時間行動。また、稜線を歩く予定だ。
強風での稜線は危険だということで下山の指令が下る。

二日かけて登ったが、下山はものの数時間だ。
西千人谷より下山する。
途中、山を見ながら小窓の王、産の窓、池ノ谷ガリー、長次郎ノ頭、長次郎ノコル、を説明してもらう。
劔を見ながら、登頂したかったなあ、とも思うし、しなくてよかった、とも思う。
今回の合宿でも自分の不足部分が山のように出てきて下山時の胸中は辛い思いでいっぱいだった。でも、一つ一つ克服していくしか道はない。
次回、劔に登るときにはもっと「山に登る」力をつけてこようと思う。
そのために、一回一回の山行をおろそかにせずトレーニングしていこう、と思えた春合宿だった。
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